「86-エイティシックス-」感想②
第2クールのあらすじ
そういうわけで、12話の終わりでレギオン支配地域に特攻させられたシン達86(エイティシックス)の5名は、奇跡的にギアーデ連邦に救出されていた。
「元少年兵でひどい扱いを受けてきたのだから、これからは平和に過ごすべきだ」「可愛そうな子供達」というレッテルを貼られ続けて、86の5人は悩むものの、結局戦場に戻ることを選択する。
現実で起きている、少年兵が居場所を失って結局ゲリラに戻る問題と似通っていますね。86の場合は、彼らが戦う力も意志も持っているのに、目の前で起きていることに知らんぷりができない、という理屈で戦場に戻りますが、戻った当初は何を目指すのかを考えきれていませんでした。
しかしレギオンとの戦いを通して、86達は戦いの先の景色、「海を見たい」とか「綺麗な景色を見たい」といった目標を持つようになっていく。
ただ一人、シンを除いては。
シンの行く先
第1クールの終わりあたりから片鱗が見えてましたが、「死神」として皆の死を見届けて、彼らを忘れず「連れて行く」役目を負っていたシンは、その余りの重さに耐えかねて無意識に死に場所を求めるようになっていました。
ですが元スピアヘッド戦隊の仲間達、フレデリカやハインスト、連邦の人々に何度も言われ続けてきた言葉——「一人で全部背負うな」「生きて帰ってこい」「戦いが終わったら何を見たいのか」——が彼を引き留めます。
第2クールを通して戦い続けてきたフレデリカの騎士・キリに殺されかけたところで、思わぬ助け船が入ってシンは救われる。
そして、シンが唯一「忘れないでいてくれますか」と自分自身を託した相手、レーナ少佐が目の前に現れる。
第1クールは人種差別・格差社会などがテーマだったように思いますが、第2クールは明確に少年兵・戦争・PTSDがテーマだろうなと感じます。
俺には、俺を置いてく気がない奴らがいる
俺は、俺でいいと言ってくれる人がいる
だから、多分もう大丈夫
自分で行ける
シンはかつて因縁を持った兄・レイや、かつての仲間達と区切りをつけました。死に場所を求めるのではなく、レーナを連れていく景色を切り開くために。
「忘れません」
「追いつきます」
……24話の最後の最後を見るためにこのアニメを見るんですね!!
私、泣きました😭
アニメ中でのこの辺りの心理描写はもう凄い、としか言えないです。言葉にせず、映像と台詞で暗喩して表現しています。
戦争物としてのクオリティの高さとアニメ構成
作者の方のミリタリー知識の厚さはもはや言うことないです。ジャガーノートや兵器周りの設定が細かい!ミリオタもきっと満足。
先述したように、第2クールのテーマは少年兵・戦争・PTSD。(多分)
何度にもわたって「君たちみたいな子供が戦場に行く必要なんて無い」「死にに行くな」「何で戦うんだ」という問い掛けがなされます。その度に86のメンバーは「見て見ぬ振りをするのは白豚(共和国のアルバたち)と同じだ」「勝手に可愛そうな子供って決めつけられるのは嫌だ」ということを主張し、戦場に戻ることを選択します。
我々のような平和な日本社会に暮らす人々には想像しにくいですが、戦場に行って生き延びた人々は、なかなか平和な社会に順応ができません。
平和を享受している自分自身に違和感を持つようになり、結局は戦場に戻ろうとしてしまいます。それは命を散らしにいく無為な行為に見えるかもしれませんが、彼らにしてみれば大事な生き方のひとつなのです。(ましてやレギオンに滅ぼされそうな世界ですしね)
そういった視点から見ても、このアニメのテーマは深く、よく考えられているなと感じます。
一方で第二クールが始まってからの内容は、正直、薄い引き伸ばしといっても過言ではないかなと……。
大事なキャラが死んでしまう描写などはありますが、それ以外では蜘蛛型先頭ロボットを動かして戦うシーンと、シンとフレデリカが悩みや葛藤を吐露し続けるシーンがほとんどです。12話分、戦争を続けるだけなので地味になるのはもう仕方ないとはいえ、もうちょっと欲しかった感はあります。
とはいえ長い戦いを乗り越えて再会する23〜24話はやはり感動させられました。アニメーターや脚本、監督の方の情熱に引き摺られる、あっぱれなアニメです。