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「死んだ山田と教室」 感想

著者:金子玲介
ジャンル:ミステリーor日本文学

あらすじ

夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。

読みやすいメフィスト

2024年メフィスト賞受賞作品!著者の金子さんは1993年生まれということで、31歳ですかね。若い才能。
メフィスト賞といえば「イロモノ」が集まる賞として、コアな人気を誇っている賞ではありますが、その分難解さがあったりして取っ付きにくさを感じている人もいるでしょうか。
こちらはそんな方でもおすすめ。ページ数も控えめで、相当読みやすいです。どちらかといえばライトノベル調で書かれた文体、会話文中心の展開、難しい単語を抜きにして高校生らしい等身大の文章。学生さんにも推薦します。

これは青春なのか? 純文学なのか? ミステリーなのか?

山田が死んだ当初、クラスのメンバーがとても優しく、粋で、本当に仲が良かったんだなあ、という感動を覚えました。友情自体は以降もまったく変わらないのですが、みんな間違いなくいい奴なのですが、ただ人間って変わらずにはいられないんですよね。変わることが生きるってことなので。
死んでしまってスピーカーになって、そのままで、ひたすら同じ場所に留まる山田と、彼をさまざまな想いを抱えて見つめる友人達。
青春と友情と、その裏でエッセンスのように動いている伏線、真実なのか、はたまたそうでないのか、ミステリーの香り。気づけばページを捲る手が止まらなくなっているはず。

感想

こんなメフィスト賞は今まであっただろうか? 新しい時代を感じる作風。優しくて、楽しくてバカで、ほんの少しほろ苦い。青春と〝死〟の物語です。


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