トンネルの出口はどこ
疲れた。
やっと帰路に着いた時、時計は23時を回っていた。
張り詰めた夜の空気に、自分の足音だけがコツンコツンと虚しく響いた。
前にも後ろにも、人っ子一人いない真っ暗な道を進むのは空恐ろしい。
私は歩みを速めた。
ふと、中学生の頃を思い出した。
中学3年生のちょうど今頃。受験を目前に控えた私は、毎日夜遅くまで塾に残って勉強をしていた。
塾からの帰り道は今日と同じように、寒くて、暗くて、怖かった。
「冬の夜道は危険よ」
と言って、母が毎晩、家の前で私を待っていてくれた。
反抗期真っ只中の私は、待っていてくれた母には目もくれず、無言で家に入ることもしばしばであった。
でも、いつも、暗い道のその先に、パジャマの上にダウンを着込みサンダルをつっかけた母の姿を認めると、ほーっと緊張を緩めることができた。
今はいくら目を凝らそうとも、この道の先に母の姿が浮かび上がることはない。
私はこの先、この暗い道を、何を道標に歩いていけばいいのだろう。
そんなことを思いながら、私は、恐怖を打ち消すために淡々と歩き続ける。