見出し画像

夏の名残り

 不覚にも、今頃になってコロナに感染…(⁠T⁠T⁠)
 あれほど気をつけていたのに、一瞬の隙を突かれて・・・
 ひたすら倦怠感と微熱が続く。
 抗ウィルス剤ラゲブリオを服用しながら、5日間の療養。



🍀
 ようやく秋・・・なのだが、いまだに書斎の机の上は猛暑の8月から9月にかけて読み散らかした本の残骸がだらしなく積み残されたままだ。
 ソファーを占領しているものまで合わせれば50〜60冊くらいか…
(ま、noteにまで手が回らないはずだよ💦)

 何はともあれ一度これらの本を書庫に収めないことには秋が始まらないのだが、余韻を引きずる作品が多く、なかなか踏み切れない。

 
🍀🍀
 哲学・思想、海外文学、日本の純文学、大衆小説、ミステリー、コミックに至るまで、人間存在の核心に迫る作品であればジャンルは問わない。
 だが案外じんわりと心に残るのは、重いテーマを扱いながらも大上段に振りかぶらず、軽い日常言語を用いて世界を切り取るミニマルな文芸作品だ。

 例えば・・・

 ユル〜イ装画だがコミックでもライトノベルでもない。
 NHKBSでドラマ化されて放映中なのでご存知の方も多いと思うが、芥川賞作家・藤野千夜の最近作である。
 受賞作の『恋の休日』から最近の『じい散歩』、そしてこの作品に至るまで一貫しているのは、失業だの貧困だの性的マイノリティの問題だのと色々重い現実を抱えてはいるものの、ユーモラスにほんわかと日々を生きる庶民の姿を、軽く平易な文体を用いて包み込む温かい筆致が魅力だ。
「人生、色々あるけど、ま、それなりに何とかのほほんと楽しく(⁠^⁠^⁠) 」というふうな…
 おそらく、そこには、男性であることに違和感を持ち女性として生きてきた作者自身の「マイノリティであっても、こんなふうにすべての人たちが共存して普通に楽しく生きていける世の中だったらいいなぁ」という願いが満ち満ちている。


 あるいは、「イヤミス・・・・の女王」と呼ばれる湊かなえの作品。
 サスペンスミステリーと並んで彼女の得意分野である登山小説だ。
 
 前作『山女日記』の続編である。

 前作から10年を経ての続編なので、作者自身の登山歴の深まりにつれて山に向かう女性の心情を描く作品世界もいっそうの深化を遂げ、読み応えのある作品となっている。
 たしかに、人はこのように内面に何かしらの想いを抱えて山に向かうことは事実だ。


 もう一つ、浅田次郎の最近作から。

 この作品もつい先頃までNHKBSでもドラマ化されて放映されていたので、ご覧になった方もいるだろう。

 社会的には成功を遂げながらも、内面には深い喪失感を抱えた者たちが故郷の温もりを求めて、ある老婆が仮初めの・・・・「母」を演じる限界集落の村を訪れる物語だ。
 ほのぼの系の大人のメルヘンかと思いきや、物語は次第にミステリアスな様相を呈してくる。
 しかし最後は、「母」を演じる老婆と、それを受け入れる者たちの間に芽生えた本当の「絆」の理由が明らかになる。

 もともと巧みなストーリーテラーである浅田次郎の物語世界が、古稀を過ぎていっそうの冴えと深まりを見せている。