【読書感想文】 ガチャガチャの経済学
<イントロダクション>
ガチャガチャ市場が拡大している。近年は町おこしや企業のマーケティング手段としても注目。ガチャガチャビジネスに携わって30年、日本ガチャガチャ協会 会長の小野尾勝彦氏が市場を解説する。
ポイント1.ガチャガチャ市場の現状と、急成長の背景
ガチャガチャの国内市場規模は2022年で610億円。2012年は270億円だったため、10年で2倍以上だ。これは日本玩具協会に含まれている企業だけの統計で、業界1位と2位のバンダイとタカラトミーは含まれているものの、ガチャガチャメーカーの半数は参加していないとされている。そのため、実際には610億円以上だ。
成長を支えているのは、大人の女性である。特に20~30代の女性は子供のころには興味がなかったが、大人になってから初めてガチャガチャを買うという人がたくさんいる。
ここに専門店の普及という要素が加わる。「ガチャガチャの森」などの専門店は内装を明るい白基調で統一。ガチャガチャ売り場の”暗い””狭い””マニアっぽい”という要素を排除した。さらに、コロナ禍でデパートやショッピングモールで多くの店舗が閉鎖。そこにガチャガチャが置かれたのだという。
はじめはコロナでの”穴埋め”だったが一度、置かれると場が賑やかになることもあり、引き続き設置されている。筆者のが、ヒアリングしたところ、まだまだガチャガチャの出店要請は高いそうだ。市場期b1000億円以上は見込めるとしている。
ポイント2.ガチャガチャで街おこし
日本各地で「ご当地ガチャ」が広がっている。これは観光客に喜ばれる商品から、地元民だけが知るローカルなネタまで広く題材に取り上げてガチャガチャの商品化する。外部向けには地域の魅力の発信、内部向きには地元愛の醸成を図ろうとするものだ。
先駆けとなったのは2021年3月、さいたま市大宮区の大宮駅周辺で発売された「大宮ガチャタマ」。当初月1000個も売れればと見込んでいたのが、SNSで好評を博し、ついには第5弾で累計140万個まで出た。
ポイント3.有限会社ザリガニワークスへのインタビュー
ザリガニワークスはメーカーの1社で、ライセンスキャラクターが主流だった2000年代から、クリエイターとして名前と顔を売り出して物を作っていった。今のオリジナルブームの先駆けである。
工作担当である武笠太郎氏は、現在「地産ガチャ」という神奈川県相模原市のご当地ガチャを作っている。名目は町おこしのためだが、武笠氏としては「面白いからやっている」という。
ガチャガチャという決して儲かるわけでもない業界で「多くの人や企業が参入してきて、歯を食いしばりながらやっているのはやっぱり面白いから」だと武笠氏は分析する。
デザイン担当の坂本嘉種氏によれば、ガチャガチャは他の商材に比べて企画から発売の時間が短く、動きも軽いため、「やりましょう」となったらワーッと進んでしまう。
面白さ、スピード感がクリエイターを惹きつけるのかもしれない。
一方、ガチャガチャは毎月新シリーズが400種類ほど出ている。そこから選ばれるのは難しい。
武笠氏らは、企画のスタンスとしては、ちょっと捻ったものを出したいと常々考えているのだそう。
マーケティング的に考えるのではなく、「俺が好きなんだ」と思える企画を重視しているそうだ。ちょっと捻った面白さの方が、結果的にSNSでの共感なども呼びやすい。決して収入がたくさん得られる業界ではないので、自分の好きを大事にするというスタンスを貫いている。