「キスはレモンの味?」から見る結婚できる女とできない女の違いの話
「なんで、結婚しないの?」
そう聞かれたのは一度や二度ではない。
結婚したいよ、バーカ。誰よりも結婚願望アリアリだよ、バーカ。そう、何度も思うのだが相手の立場に立つと質問したくなる気持ちもわかる。
なぜなら、結婚前提のお付き合いやら、プロポーズまがいのことやら、同棲やら、そういった類のものは一度や二度ではないからである。
私は何が足りないのだろう。そう悩んだことも何度もあるが、最近は「脳内アルバムがいっぱいになってない説」を最有力の仮説にしている。
16歳夏。私は山奥の女子高に通っていた。女子高なんていったらどんなにお嬢様なのだと思うだろうが全くもってそんなことはない。どちらかというと貧乏な方である。公立の高校なので、お金持ちじゃなくとも通えた。
しかしながら、その地域の箱入り娘たちが親に大変過保護に育てられた末にその高校に入れられているわけで、いい意味でも悪い意味でもみんな、ピュアなのである。
当時の私は、その過保護の呪縛から逃れたいのと元々の恋愛体質と好奇心とがぐっちゃぐちゃに混じり合って第一次遊び期を迎えていた。
彼氏が欲しい、なんなら車で迎えに来てくれるような年上の彼氏が欲しい...!元々のコンプリート欲求が騒ぎ出して(コンプリートの話はまた今度)とにかく誰でもいいので年上の彼氏が欲しかった。
紆余曲折で出会った4つ年上彼氏の話もまた今度したいと思うが、まあ女子高生に手を出すような男であるからろくでもないし、すこぶる手が早い。
付き合ったその日にキスはもちろん済ませた。
後日、彼氏ができたことを友達に報告した。当時特に仲の良かった友達はいわゆるヒエラルキー上位タイプで大体彼氏はいたし、部活や勉強、生徒会などで活躍しているキラキラタイプだったと思う。だから彼氏ができただの、キスまでは終わらせただのなんて別に大したアレではないのだが、いかんせん教室で話をしているわけだから周りの別のグループの友達たちも寄ってくるわけである。
「ねえ、キスってさ、ほんとにレモンの味するの?」
・・・
なんて答えたかな、、、全く思い出せん。でも、確実にレモンの味なんかじゃなくて無味だしせいぜい宇多田ヒカルよろしくタバコの味がするかどうかくらいなわけでロマンチックな味なんてするわけもない。
しかし、その時の質問への衝撃は、別にあった。彼女たちはキス一つに夢を描いていたわけである。
私はそんなもの全く考えたこともなかったし、実際なんの感動もなかった。通過儀礼とすら思っていなかった。
あの時質問をしてくれた彼女たちはみんないつのまにか結婚していた。キスはレモンの味じゃないことを知って、いくつかの甘い思い出や現実的な思い出を積み重ねて結婚していった。
かくいう私は、今になって思えば、恋愛における一つ一つの思い出なんてそんなにキラキラしてもなくて、思い出せるものも少ない。
きっと経験はしているのに、それらは小さいどうでもいいものとして頭の隅っこに追いやられているのだ。
本当の恋愛は、きっとその小さな一つ一つを丁寧噛み締めて思い出にしていくこと、楽しくてほろ苦い思い出として大切にしていくことなのだろう。
そして、その思い出で脳内アルバムをいっぱいに埋め尽くしたら、もしかしたら私も恋愛ジャンキーから卒業できるのかもしれない。