ドラマ『海のはじまり』第5話感想 女は弱し、されど母は強し
レ・ミゼラブルの作者ヴィクトル・ユーゴーの言葉に「女は弱し、されど母は強し」というのがある。『海のはじまり第5話』は、まさしくこの言葉を体現した回であった。
女は弱し
月岡家の面々は夏と百瀬弥生の結婚話を期待して夏を迎え入れた。しかし、夏の「子どもがいる」という言葉に一同は戸惑いを見せるが今時珍しくもないと喜びを表す。
一同の喜びの声に躊躇する夏。
「弥生さんの子じゃない…」
その言葉に思わず立ち上がる母。
ここからの母は凄かった。月岡ゆき子を演じる西田尚美、改めて良い俳優さんだと思った。
相変わらず説明下手な夏に事の経緯を知っている私としては、夏に対してもどかしさと応援する気持ちが入り混じり複雑な気持ちになってしまった。
そうそう、そのあたりしっかり説明しないとね。夏頑張れ!と夏を応援する私。
しかし、母は容赦しない。畳みかける母。
うーん、全くの正論。ぐうの音も出ないとはこのこと。弱い女性の立場を代弁する母。母の言葉を夏も認めざる得ない
母は強し
夏の性格を分かっている義父と義弟が夏を擁護する。私も「そうだそうだ」と心で思う。
しかし、偉大な母は男どもを一刀両断するのであった。
ここも夏の性格を熟知しているゆき子の強さと優しさがにじみ出てて良かった。
コロッケ
箸を取りコロッケを一つ自分のお皿に移す母。
ここのコロッケの演出が良かった。月岡ゆき子が南雲海を受け入れた瞬間だった。もちろんこのコロッケは母ゆき子の手作り。百瀬弥生が作れないと言っていたコロッケ。
この場面は、このドラマの名場面だったと思う。ゆき子は結局会えなかった水季という弱き女性の立場に思いを馳せ、水季の心情を忘れないように夏を諭す。同時にもう一人の弱き女性である百瀬弥生のことも配慮する。シングルマザーも経験しているゆき子。これは強き母だから出来たことだろう。月岡ゆき子と南雲朱音が電話で会話するところは横綱同士ががっぷり四つに組んだ取組みを見てる気がした。
そして、コロッケ。第1話で「作れない」と言った弥生。それに対して自分でコロッケを作り口にするゆき子。コロッケは南雲海を象徴しているのかもしれない。もちろん、ゆき子が海を産んだ訳ではないが血の繋がりはある。このドラマの主要登場人物の女性で弥生だけが母親ではない。いみじくも南雲朱音が弥生に言い放った「産んだことないでしょ」という言葉が響いてくる。
前回の感想で私は弥生は母子家庭かもしれないと書いた。結局、弥生は母子家庭ではなかったようだが親を特に母親を嫌っている。百瀬弥生はその嫌っている母親になれるのだろうか。美味しいコロッケを作れるようになるのだろうか。