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[覚え書き]柿渋[マニアック]

柿渋(かきしぶ)というものがある。
何かというと、これは日本古来の塗料である。

青柿の実を絞って発酵させもので、これを塗ったものはオレンジ色に染まり、紫外線によって徐々に落ち着いた赤茶色に変化する。
そのままであれば木目を生かした仕上げとなり、
弁柄や松煙と言った顔料を溶かして着色すれば、不透明な塗料にもなる。
要するに昔からある、天然のニス兼ペンキみたいなものである。

家屋の壁、塀、家具、什器、また耐水性を持つことから雨具などにも使われ、極めて多用途なのだが、明治以前は塗装といえば、これか、超高級な漆かの二択であった。
「粋な黒塀 見越しの松に 仇な姿の 洗い髪」という時の黒塀もこの柿渋で塗ってあったわけだ。(私の年齢からしても例えが古すぎるので、わからなかったらスルーで)

長らく忘れられていた塗料だが、近年その素朴な美しさが見直され、自然塗料として注目されている。
見た目の良さとともに、ムラになりにくく、水性なので
後始末も楽だ。

と、何かの広告みたいな文章だが、そんなに良いものなら、なぜ廃れたのかというと、やはり耐久性の問題であろう。
特に野外に使用する場合、良いコンディションを維持するためには、毎年塗り替えが必要なのである。

そしてもう一つ決定的な弱点がある。

臭いのだ。

強烈に臭い。

さらに塗ってから最低でも数日は臭いが抜けないので、風に当てながら換気が必要なのである。

今日、頼まれ仕事で、ちょっとした展示什器に柿渋を塗り直す仕事をしていたのだが、「洗っていない犬のにおいがする」といわれたので、思わずこの文章を記す。


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