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公開授業 1けたをかけるかけ算の筆算 〜導入編〜

1.はじめに

3年生では掛け算の筆算を初めて習う。
かけ算の筆算は、アルゴリズムを覚えることも大切だが、筆算の仕方について意味理解を図っていくことがとても大切だと考える。このように意味理解とアルゴリズムを結びつけることで筆算の手順を忘れることなく、さらに、どこの位に何を書いてよいか理解できるようになると考える。
本時は、かけ算の筆算に接続する時間として
12 × 3について絵や図や言葉を使ってどのように計算すればよいか考えることを目標に授業を行った。
その中で様々な仕掛けを施していった。まずはその導入時の仕掛けを中心に述べていきたい。

2.問題場面を理解する仕掛け

子供たちにとって文章問題は単純な計算問題よりも煙たがられる。その原因は計算処理はできても、文書問題は問題を理解するところにハードルなあるからだ。
そこで本時は、問題文を区切りながら書く(読む)情報を過多にする問いの文を隠すという3つの仕掛けを行った。

問題文を区切りながら読む。(書く)

子供たちは、長い文章よりも、短い文章の方が、文章の意味を理解しやすい。そのため短く文章を切って提示した。
以下は実際のやりとりの抜粋(太字は問題部分)である。

T:まさひろさんは、10時に
C:今日は時計の問題?
T:どうかなー。続き行くよ。50メートル先の
C:時刻の問題かもしれない
T:スーパーへ行きます。
C:近い!
T:本当に近いかなぁ。10時に50メートル離れたスーパー行くことを想像してよ。
C:走ったら10時10秒に着く。すごく近いよ。
T:そこで、
C:金曜日の続き(前時の学習の続き?という意味)?掛け算かも!
T:112円の
C:安い!カルパス?うまい棒?
T:みんなだったら何か買いたい?
C:(色々なお菓子を言う)
T:チョコを
C:チョコか!いくつ買ったの?
T:いくつか知りたいんだね?
C:いくつかわからないと問題にならないから!
T:4個買い、
C:少ない!
T:少ないかなぁ?先生の分と奥さんの分と娘の分と息子の分で4個なんだ。
C:優しい。
T:お釣りがないように払いたいと思います。
C:なんで50円持ってけば足りそうじゃん!
T:余分にお金持ってくと余計なもの買いそうだからね
C:わかる。私も余計なもの買っちゃったことある。

本時の実際のやりとりの抜粋
やりとり後にできた問いの文を隠した問題

このようにやりとりをして問題場面を提示した。
このように、短い文に区切ることで、問題場面を理解しやすくなる。さらに、子供とやりとりをしながら問題文を完成させていくことで、問題場面を具体的にイメージしやすくなり、子供たちがあたかも体験したかのような仮想体験をすることができる。このようにすることで問題理解が深まると考える。

問いの文を隠す

上記のように問題場面を提示した後、問いの文をあえて隠して提示し、問題を解いてみようと投げかけた。すると子供たちは
これでは無理だよ。
何を求めていいかわからない。
と、声が上がった。
そこで、
問いの文はどうなるのか、予想してみよう
と問いかけた。すると、
何円持っていけばいいですか?
何円払えばいいですか?
と問いの文を考えることができた。

子供たちと作った問題


このように、問いの文をあえて隠すことで、得られた情報からどんな問題を作ることができるか子供から問題にアプローチすることができると考える。そのため問題場面の理解がさらに進むと考える。
また何も問われているか始めに自分で考えることで、何を答えなければいけないか、何を答えとして出さなければいけないかが明確になると考える。

情報過多の問題にする

今回は、問いの文を隠し、さらに情報過多な問題を提示した。これらの工夫をセットで行うことで、情報を整理し、問いの文を考えたり、問いの文から必要な情報を抜き出したりと問いと情報が相互に関連し合い、問題文のより深い理解につながると考える。
また、算数の問題は整えられた問題が多く出ているが、たまにはこのように整えられていない問題を提示することで情報を取捨選択する力や必要な情報を探す力などが高まると考える。

3.協議会でのアドバイス

文章問題の解決のスタートは問題理解から。そのため問題理解がとても大事と言っても過言でない。
協議会では、その問題提示の過程を褒めていただいた。
アドバイスとして上がったのは、子供たちが情報不足や情報過多の問題に慣れ、既に乗り越えられるからこそ、もう一つレベルを上げるとよいのではないかというものだった。
具体的には、問題が成立しないような問いの文を提示し(今回の問題でいうと、何時にスーパーに着きますかという問いの文にする)
この問いは答えが出ないということを子供に気付かせた後、
問題が成立する問いの文を作ってごらん。
という流れにするというものだった。
このような流れにすると、問題に関わる力がより一層高まるというアドバイスをいただいた。確かに得られた情報から問題が不成立ということを判断するステップが入ることで関わる力というものが高まると私も思った。関わる力がより高まれば、子供は手立てがなくても自らの力で問題理解を深めることができるのではないかと考えた。そのため、このアドバイスを次回は取り入れていきたいと考えた。

参考引用文献
算数授業のカード実践 東洋館出版 樋口万太郎

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