【1分で読了。即興小説】死の島
【お題】
死の島
【本文】
この島では数週間前から、とある感染症が蔓延し、島民の約80%が死滅している。
その病にかかると数日のうちに、皮膚がどろどろに溶けていき、最期には醜い姿になって息絶える。まさに死の病であった。
感染源は気体に舞う謎の胞子で、薄暗い湿った場所に発生していることが判明している。
島民は国から完全に見捨てられ、孤立状態にあった。
島民はこの病になすすべもなく、ただ神に祈るのみ。
そんなある時、事件が起きた。
一人の少年にこの感染症に対する免疫があることがわかったのだ。
この感染症は、胞子を吸えば即感染するほど感染力が強いのだが、少年は胞子の溜った廃墟の中で平気で過ごしていた。
調査に来ていたある科学者が言うことには、彼の骨髄から抽出できる髄液を接種すれば免疫を得られるらしい。
それを聞いた島民が、最後の希望として彼に注目した。彼らは少年を捕らえ、何とか骨髄を取り出そうと考えた。
この時から、島民と少年の命がけの鬼ごっこが始まった。
少年は幸い運動神経も頭もよく、襲いかかる島民を次々と返り討ちにしていった。感染して死ぬ人よりも彼に殺される人のほうが多くなっていた。
こんな状況で数週間が経ち、島には誰もいなくなった。
ただ一人、少年を除いて。
この死の島には、もう誰も近づくことはないだろう。
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