『さんすうワールド』で楽しい算数②:1年生と楽しみながら「式を読む」授業
教育出版の算数の教科書にある『さんすうワールド』の紹介です。
1回目の記事はこちらです。
今回紹介するのは1年生「10こをならべよう」です。この題材では式がどの図形を表していのかを考える「式を読む」という活動に取り組みます。
教科書で示されている図は以下のような図です。
この図の下部には「1+3+3+3」「2+⬜︎+⬜︎」「1+2+3+⬜︎」という式と、「だれがどれをならべたのかな。」「ほかのならべかたやしきもありそうだね。」というコメントがあります。
やはり、このページを授業中に開いて「さぁ考えてみましょう!」と促しても、子どもの主たる思いは「答えを見つけたい!」となってしまいます。すると、この学習で一番子どもが豊かに発想できる「ほかのならべかたやしきもありそうだね。」という部分にスポットライトが当たりにくくなります。
そこを、子どもが「こんな式に表せたよ!」「どんな見方をしたの!?」と楽しみながら「式を読む」活動になると、「教室の中にいる友達の思いが分かる」素敵な「算数の体験」になるのではないでしょうか。
展開①:「いろいろな式にできそうだよ!」
大まかな展開の方針は、図を1つずつ扱うことです。1つ前のビー玉の図の色で言うと、「青→緑→赤」の順に提示することで、子どもが自分たちで式を作り、クラスの子どもたちと式を読み合う展開にしていきます。
はじめに、子どもたちと「どんなしきになるのかな?」と一緒にノートに書きました。ただ、ここでは子どもたちはまだ何をするのか全然分かっていません。
そこでスライドを準備し、「いくつあるでしょう?」と問いかけてスライドを見せます。でも、一瞬です。この一瞬がポイントです。
「先生!全然分からないよ!」「○個ある気がする!」「もう一回見せて!」などと口々に子どもたちは反応します。「じゃあ、もう1回見せるね!」と投げかけると、子どもたちは真剣な表情で画面を見ます。そして、またパッと見せて消すと、今度は「あぁ〜…(分からなかった)」という子と、「9こ?」と言う子がいました。「どうして9個だと思ったの?」と聞くと、「3が3こずつで9個かな?」と話してくれました。それを聞いた数人が「そうそう!3+3+3=9だよ!」とつなげて発言していきました。
このように、一瞬しか見れないことで子どもたちは「数のまとまり」に着目しやすくなります。2年生の『かけ算』でも重要になる「数のまとまり」。1年生の段階からこのような見方をさせていくことで、スムーズに学習を進めていけるようになるはずです。
「それでは見てみようか。」と実際の図をしっかり提示します。子どもたちは、「おしかったー!」と言いました。「どこがおしいと思ったの?」と問い返すと、「あと1個足りなかった。」「3+3+3じゃなくて3+3+3+1だった!」などと、式にして考え始める発言が出てきます。
そこに、ある子が「これなら違う式の方がいいんじゃない?」と話し始めました。「どういうこと?」と聞くと「3+4+3=10」と教えてくれます。その式を聞いて、「その方が分かりやすい!」「3と1を合体して4にしたんだ!」と納得の子どもたち。そこで、図を貼り、式を書いて「この式の3は図でいうとどこのことなの?」と順番に確認しました。「なるほど、図を式に表すに方法はいろいろありそうだね。」と、子どもたちのやりとりを簡単にまとめました。
展開②「え?どうやって分けたの?」
次はL字の形の図形です。この図形は2年生の「かけ算の利用」、4年生の「面積」、5年生の「体積」でも見る形です。小学校の算数では定番の形ともいえます。
図を見せると「式ができるよ!」と子どもたちがやる気になっているので、式をノートに書かせます。(図を印刷して配る)子どもたちは思い思いに式を作り始めます。
板書には「9+1」と発言した子が位置付いています。当然、この段階ではまだ全員が式にすることを理解しているわけではないので、「9+1という式を考えた子がいるけれど、その子の気持ち分かるかな?」取り上げ、みんなと考えます。すると「難しいなぁ…。」「パッと分かる数じゃないとなぁ…。」などと子どもたちから、「まとまりで見る」ポイントが引き出されてきます。もちろん、その子の考えは図をみんなで見て、「なんだ!そう数えたかったんだね!」「それなら〜〜という式にした方がいいよ!」と、子どもたちの手でその式をみんなが分かる式へと変えていきます。
左上右上の図を取り上げ、「3と3をまとめて6。2と2をまとめて4としてもいいね!」などと、式から図を読み取っていきました。
その後に「2+2+2+2+2」という式を取り上げます。子どもたちは「2が5個ある…。」と式から読み取りますが、図ではなかなか見えず。少しの間の後に「横だ!」という声から図の中に2のまとまりが見えてきました。今まで縦長のまとまりから、横長のまとまりへ。少しの変化でも意外と子どもたちは悩むものです。
展開③「ななめでもできる!」
ここまでであっという間に時間が過ぎていきます。最後はピラミッド型の図です。図を見た瞬間「わぁ!」と喜びます。
子どもたちのノートを見て回ると「4+3+2+1」と多く書いています。そこで、式を取り上げ「図をどんな風に見て式を考えたのかな?」と問いかけます。すると、最初に図に書き込みを行った子が左側の図を赤で書き始めたのです。
「えぇ!?」子どもたちはびっくります。「そこで4!?」と声があがりますが「まぁまぁ見てみようよ。」と続きを促すと、「そういうことか!」「ピザみたいだね!」「斜めもできるんだ!」と自分とは違う見方に納得です。
多くの子の考えていた図を確認したところで、時間切れとなりました。「面白い。もっとやりたかった。」という子もおり、周りのアイデアを楽しむ時間になったのではないかと感じました。
相手の思いが分かるし、自分の思いも分かってもらえることが、優しさを育むことにもつながる。
以上が「さんすうワールド」の授業でした。
「式を読み取る」といった視点で振り返っても、教科書に設定されている式は3つ。授業の中で扱った式は8つ程度。しかも、子どもたちが考えた式です。それだけでも活動の広がりと質は担保できたのではないでしょうか。
授業を語るときに「分かる」という言葉がよく使われます。例えば、「どの子もわかる授業」といったようにです。しかし、私は学習内容だけでは意味がないと思っています。せっかく同じ教室、同じ空間にいるのですから、その子が「何を考え、どういう見方をしているのか」まで、理解し合いたいです。
私が願う「分かる」とは、学習内容と仲間のことが<分かる>なのです。
授業を通して、相手の思いが分かるし、自分の思いも分かってもらえる体験を生み出すことができれば、「相手のことを考えなさい!」などという指導は極力減らすことができます。授業の中でこそ、相手のこと思いやることも学んでいくことで優しさを育むことにつながるのではないかと考えています。
ありがとうございました。
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