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授業検討会を経て:『平面図形の面積(四角形と三角形の面積)』の授業を考えるときに大切にしたいこと /単元を貫いて子どもの「〜したい」を思い描く

 以前書いた記事の続きです。もしよろしければ御覧ください。

 とある研究会に向けた授業づくりのグループと1回目の授業検討が終わりました。

 授業者の先生、サポートの先生との顔合わせの意味合いもあった会なので、まずは授業者の先生の授業に対する願いや思いを聞き、感じたことを伝えました。

 今回はその伝えたことをベースとして『平面図形の面積(四角形と三角形の面積)』の授業を考える上で大切にしたいことをお伝えしたいと思います。

授業者の先生の願い:0から考えることに敬意をもって

 授業者の先生には感謝の気持ちがいつも湧いてきます。

 研究会(校内研究もです)で授業者を引き受けることは、多かれ少なかれプレッシャーに感じるものです。その上、自身の業務をしつつ、授業について考えていることを想像するとただただ頭が下がります。

 授業者の先生は「まだ全然考えていないのですが…」と言いながら、授業への思いを話してくれました。



  1. 公開する場面は「三角形の面積」を求める場面にしたい。

  2. 単元の導入では授業で扱う図形を子どもたちに提示し、意欲を高めたい。

  3. デジタル教科書をのコンテンツを用いて、自力解決や交流に役立てたい。


 要約すると3点かもしれません。しかし、先生が語る時の表情、仕草からも授業への思いが伝わってきます。



 授業協力をしていると、1回目の検討会で「何をやればいいですか?決めてください。」と教科書を渡されることもあります。そういう場合は、授業者も私もお互い苦労することが多いように思います。0に何をかけても0になるわけですから。

 一方、以前は、私よりも年上の先生から「授業でチャレンジがしたいです!チャレンジできる授業を教えてください!」と言われたこともあります。こちらもそのチャレンジに応えるべく教材のアイデアを提案し、授業後の検討会まで熱く議論したことが記憶に残っています。

 そう考えると、「0を1にしようとする思い」があるだけでも、よりよい授業づくりはできるのかもしれません。


 授業者の先生の語りを聞きながら、どんなところに気をつけてもらえれば子どもたちと楽しく三角形の面積の学習をしてもらえるのかを考えていました。


単元で扱う問題を見せることのメリット・デメリット

 まず、授業者の先生の思いにあった「単元の導入では授業で扱う図形を子どもたちに提示し、意欲を高めたい」という点です。

 これはメリット・デメリットの両方が存在します。


メリットは「見通し」です。

 よく「単元の問題全てが分かると安心感があって…」と「見通し」が語られることがあります。それも良いのですが、もう一歩踏み込んで考えたいです。

 単元の問題が分かることで子どもにもたせたい「見通し」は、解決方法が共通することの「見通し」です。言い換えると、『四角形と三角形の面積』の単元を通して働く数学的な見方・考え方が引き出されやすくなるということです。


 『四角形と三角形の面積』で働かせたいのは、以下の通りだと考えています。

  • 問題の図形を既習の図形(求積公式を知っている図形)に変形する「見方」

  • 等積変形、倍積変形、分割の考えを用いて既習の図形の面積の公式へと帰着する「考え方」

 平行四辺形の面積の求め方を考える授業の振り返り場面で、「三角形なら平行四辺形の半分にすればいいのではないか(倍積変形)」と、自ら仮説の様なものを立てつつ学びを振り返っている子になってほしいです。

 「先生、明日の算数は問題は何やるの?」ではこの姿は引き出せないのです。

 「平行四辺形、三角形、台形、ひし形の面積を求めるんだ。それなら、平行四辺形がわかれば、三角形は半分じゃない?(見方)

 「三角形の面積もわかったぞ!あれ?これ、台形も倍にすれば平行四辺形の公式で求められるんじゃない?(考え方)

 このように、提示した全ての問題が、初めは「点」だったものが、一つずつ解決していくことで、つながりが見え「線」になっていくのです。そうすることで、自ら進んで解決に取り組もうとする姿を引き出すことができるのではないでしょうか。



 一方で、デメリットは「わくわくしにくい」です。

 教師が与えた問題に進んで取り組もうとする子どもたちだけでしょうか。

 「今日はこれをやるんだよ。単元の最初に言ったよね。」


 そんな風に、提示された問題が「解決したい問題」や「みんなで考えたい問題」ではなく、「ただ取り組むべき問題」として受け取られる可能性もあります。

 「台形面積?公式は教科書に書いてあるじゃん。」とまではいかなくても、学習への不安から事前に公式を把握し、授業で提示された問題に対して「解き方を考える」のではなく「公式を適用する」ことで解決しようとする子の存在を理解しておく必要があります。(そういう子の場合は本来、違う場面で安心して創意工夫してもらえるような手を打たなくてはいけないのですが。)



 以上のように、「単元の導入では授業で扱う図形を子どもたちに提示し、意欲を高めたい」という手立てについて考えてみました。

 ポイントとなるのは、

引き出したい子どもの姿をイメージし、提示した後に教師がどんな言葉を言うか

ではないでしょうか。


 余談ですが、私なら以下のようにします。

  1. 平行四辺形の面積の求め方を考える

  2. 平行四辺形の面積の授業で分かったことを使えば、どんな図形の面積が求められそう?と聞く

  3. 子どもたちとその図形の面積を求める順番を決める

(こうやって書くと、授業したくなりますね。)



単元を通して「面積の求め方を公式化したい!」と思えるか?

 さて、話は少し変わりますが、変わらず「単元の導入では授業で扱う図形を子どもたちに提示し、意欲を高めたい」に関連します。

 問題を提示することで「わからない問題があるから解けるようになりたい。」と必要感が生まれるのではないかという点です。

 もちろん生まれますし、できるようになりたい思いは大切にしたいものです。しかし、この単元は「わからない問題があるから解けるようになりたい。」という思いだけでは、少し弱いように思えます。

 前回の記事にも書きましたが、学習指導要領を参照すると「公式へと導く」という部分があります。つまり、以下のような思考の流れを引き出していく必要があります。



  1. 平行四辺形の面積の求め方を考え、答えを導く

  2. 他の平行四辺形でもその考え方が使えるのか試す

  3. 共通している点を「平行四辺形の面積の求め方」の公式とする

  4. 公式を適用してみる


 2と3は入れ替わることがありますが、基本この様な流れです。

 この思考はなかなか「わからない問題があるから解ける様になりたい」では、引き出されません。頑張って1と4が限界です。

 つまり、教師が

「この考え方を使えばどんな平行四辺形でも解けるの?」
「この数値(長さ)だけわかれば、面積がすぐわかる公式にできないかな?」
「公式にすれば、図形を切ったり動かしたりしなくても面積がわかるんだね!」

などと問い返しながら、「自分たちで公式にできそう!」「他の図形も公式にしたい!」という思いを膨らませていく必要があるのです。

 このように、単元を通して「面積の求め方を公式化したい!」という思いが子どもの意欲的な姿を引き出すのだと考えます。




三角形の面積の求め方を考える場面の楽しさは何か?

 本題の三角形の面積の求め方を考える場面です。

 既習として平行四辺形の求め方を考えている場合は、平行四辺形か長方形の公式に帰着していくはずです。

 この時間の楽しさは、この「帰着の仕方の多様さ」です。

 等積変形や分割の考えを使って多様な面積の求め方を子どもたちが実践します。まだ2個目図形ですからそこまで洗練されていないことが多いはずです。そこを子どもたちと「〇〇さんはどんなふうに考えたのかな?」と、その子の思いに寄り添っていく展開にしていきたいものです。


 一方で、難点は「公式化」です。

 倍積変形もしっかり出し(出ない場合にはこちらから出す)、「さて、どんな公式にできるかな?」と問うても、考えごとのつながりが見えにくいのです。

 倍積変形は「(底辺×高さ)÷2」とできますが、等積変形の多くは「底辺×(高さ÷2)」となります。そこをまとめ上げていくことが腕の見せ所となります。本来なら、倍積変形の考え方が公式のように導かれますが、なぜ等積変形ではないのかの根拠が乏しいです。(「式変形すれば一緒」なら等積変形の式を公式としてもよいと思います。)

 これは、台形もひし形も公式には倍積変形を使っているからだと考えられます。(違っていたら教えてください。)しかし、台形もひし形も面積の求め方を考えていない子にとっては「そんなの知らないよ。」ですよね。


 授業者の先生の「デジタル教科書をのコンテンツを用いて、自力解決や交流に役立てたい。」という願いは、この点を乗り越える様に活用方法を設計していくと良いのではないかと考えています。

多様さを引き出すICTの活用。
公式化に向けて考えの共有を手軽にできるようにするICTの活用。

 そう考えると、使うコンテンツの機能の取捨選択ができるようになっていくはずです。





単元を貫いて子どもの「〜したい」を思い描く

 以上が授業検討会を経て私自身が考えた内容でした。

 途中で、「単元を通して「面積の求め方を公式化したい!」という思いが子どもの意欲的な姿を引き出す」と述べました。

 この表現を、「単元を貫いて子どもの「〜したい」を思い描く」ことすれば、この単元に限らず、どの単元でも大切にしたい考え方だと思います。

 子どもの「〜したい」が単元の中でずっと同じである必要はありません。子どもが解決できたことや発見したことによって、子どもたちの「〜したい」が変化していくことは自然なことです。

 大切なのは、その「〜したい」に教師が気付き、それを実現するために子どもと一緒に考え、取り組むことです。



 改めて大切なことに気づかせてくれた、授業者の先生と授業づくりのグループの皆様に感謝です。

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