5年『四角形と三角形の面積』のデザイン③:台形の面積で「求積公式に対する見方」を広げる
5年生『四角形と三角形の面積』の単元の授業の紹介も3回目になりました。
台形の面積の求め方は、「公式を扱わないのか?」と話題になったこともある内容です。現在は当然指導内容として位置付けられていますが。
「台形の公式は必要か」という議論より、「台形の面積を求める公式によって求積公式の見方に変化が生まれ、そこに面白みを見いだせるか」と考えた方が授業はより豊かに広がっていきます。
「平行四辺形には平行四辺形の公式を使う」「三角形には三角形の公式を使う」というように求積公式全てを覚え適用しなければいけないと考えるのではなく、「求積公式はこれさえあれえば忘れても大丈夫!」「どれも共通の考え方だから一つ分かっていればいい!」ぐらいの考え方のしなやかさをもてるか。台形の面積を求める学習は、そこへの挑戦と言ってもいいかもしれません。
もしよければ、過去の記事もご覧ください。
①7時間目:「面積の公式は倍積変形」
問題を一緒に書くと(教師は板書、子どもはノートへ)、もう「また三角形かな?」「台形だよ」「五角形だよ!」などと、予想がどんどん出てきます。
おそらく、出てくる図形の面積は求められると考えているのでしょう。「五角形の面積も求められるの?」と問うと、「三角形にすればできる!」と返してきます。図形の見方がしっかりともって考えていることがよく分かります。
台形を提示すると、子どもたちは「できる!」と反応します。ある子は「三角形が2つあると考えればよい」と、五角形の面積の求め方に触れたときと似た発想をもっていました。
自力解決の後、子どもたちから出された考えは板書中央の5つです。
高さを半分にし、平行四辺形をつくる(等積変形)
台形を三角形と長方形にわけ(分割)、三角形の面積を求めて合わせる
台形を三角形と四角形にわけ(分割)、面積を合わせる
(板書の1番下の考えも同様)台形を2つあるとして平行四辺形をつくり、元に戻す(倍積変形)
左端にある考えは、授業の終盤に私が子どもたちに伝えた考えです。
3までの考えの説明によって、面積も求め方は問題なく進みます。
4の倍積変形の考え方が出され、公式化へと進んでいきます。
もはや倍積変形の考え方も難しいものではありません。そこで子どもたちが話していたのは、「公式化するには倍積変形が使えるから…」と公式化についての話でした。「三角形も倍積変形で、台形も倍積で考えると分かりやすいから、平行四辺形に倍積変形したら底辺が(8+2)で高さが4になる。」と立式が出され、「底辺」は台形の底辺と上の辺の合計だと全体で確認します。
そうすると、すぐに「(底辺+上の辺の長さ)÷2」の式で表すことができるとはっきりしました。
そこで「上底」「下底」という言葉を指導し、台形の公式化を進めます。
ここまでしたのですから、次の時間の「他の問題でも?」をもっと短縮すれば良かったと少し反省しています。
時間にも余裕があるので「私ならこういう面積の求め方も考えられるかな」と、平行線を利用した図形の等積変形によって台形を三角形に変形する考えを紹介しました。
それまでの学習で、平行四辺形,三角形と平行線に内接する図形は面積が変わらないことを学習しています。それを生かして、底辺が10cmの三角形に変形したら三角形の面積の公式で求めることができると伝えます。すると、「おぉ!」「その考えってこういう時に使うのか!」と新しい発見があったようです。(実際にひし形や一般四角形の求積の時間ではこの考えを使う子が複数いました。)
②8時間目:「台形の公式最強!」
次の時間です。平行四辺形も三角形も、1つの問題ではなく複数の図形で試し、公式を確定する作業をしています。台形も同様に取り組んでいますが、私も子どもたちも「公式で決まりでしょう」という状態でした。そこで、「自分が描いた台形で確かめてみよう!」と子どもたちに委ねてみました。
すると、「跳び箱型台形」「お皿型台形」などと好きに命名した台形をつくり、等積変形や分割の考え方を使って求めています。「どの台形もこの式で大丈夫!」とあっという間にOKです。
この活動は必要ないかもしれませんが、子どもの書いた振り返りを読むと「この時間の途中からこの式が台形の公式だと思えるようになりました。」と書く子もおり、ある程度丁寧に理解していく子のためには必要な時間だと言えます。
授業の半分程度時間が経ち、互いの台形紹介が終わると、一旦子どもたちの追究のパワーは減少したように感じました。「公式化したい!」という目的が達成されたわけですからその通りです。
そこで、「この(上底+下底)×高さ÷2の公式って他の図形でも使うことができるのかな?」と問いかけました。
その問いかけに食いつく子はそう多くありません。複数の興味を示した子と図をかきながら一緒に考え始めます。
「例えば1辺が2cmの正方形だったら、(2+2)×2÷2=4だね。」
「たて2cm、横3cmの長方形だったら、(3+3)×2÷2=3だね。」
だんだん他の子どもたちも「おや?」という表情になってきます。
「底辺3cm、高さが4cmの平行四辺形だったら、(3+3)×4÷2=12だね。」
「すごい!どれでも台形でできる!」と子どもたちの反応が出てきます。
そこで、「三角形ならどうかな?」さらに問いかけます。
「先生、三角形には上底はないよ?」
「上底が0cmということで考えてみたらどうだろう?」
「(0+4)×3÷2=6」
「すごい!三角形の面積も求められる!」
「台形の面積って最強じゃん!」
子どもたちは驚いていました。
それもそうです。「〇〇の面積の公式」は「〇〇の図形」にしか今まで適用してきていませんから、「他の図形でもできるの?」と考えるきっかけがないからです。
こうして子どもたちは、「台形の面積の公式は他の図形にも使うことができる!」と感じていきました。
学習指導要領にある「統合的・発展的」の「統合的」という言葉は、このように「自分たちの考えた公式を、既習の図形に適用して、その公式を統合していく」ことも指しているといえます。もちろん今回の授業では、「なぜ台形の公式で様々な図形の面積が求められるのか」までは触れきれていません。しかし、こういう活動を中心に据え、「分かり直し」「捉え直し」していく授業は意図的に設定しないと、子どもの思考はなかなか引き出されません。
これから、子どもたちの「追究する学び」はさらに広がりを見せていくことになります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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