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論文からつかむ校内研究の課題

今回は校内研究に関する内容です。

校内研究に関する論文を読んでいて、様々な方法で校内研究が研究されていることがわかりました。その中で、教員に対するアンケートの分析で、課題を明らかにした内容の研究を紹介しようと思います。

校内研究に携わっていると「やっぱりか」と思う内容もあるのですが、意外と新しい発見も多くあります。

姫野完治「校内授業研究及び事後検討会に対する現職教師の意識」

この研究は公立の小学校、中学校、高等学校の教師を対象にした校内授業研究及び事後検討会に関する質問紙調査の結果をまとめたものです。

「学年の教員が授業者の場合」は小学校教師、「 同教科の教員が授業者の場合」は中学校 ・高校教師の参加意識が高く、参加意識の高低には各校種における担任のあり方が影響していることがわかった。校内授業研究を活性化させるためには,参加する教師の意識が重要である。中学校や高校では教科の壁をいかに超えるかが課題と言われるが、小学校においても学年や教科が違えば参加意識は薄れている実態が明らかになった。各教師の専門に直結しない場合の参加意識をどのように高めるかが共通課題といえるだろう。

小学校では「同じ学年」の参加意識が高いことは当然だが、自分に関係ないと思ってしまう校内研究から脱却する方法を模索していく必要性が指摘されています。


また、この研究の中で興味深い指摘が複数あります。

「「学びが多かった」授業研究の特性」を調査した結果

  • 授業を参観する実践性の項目が低い

  • 指導案の検討や、2〜3年の研究の積み重ね等の継続性の項目が低い


一方で、「校内授業研究に取り入れるべきこと」を調査した結果

  • 「複数教員で多様な意見を出し合い授業設計を行う」の項目が高い


つまり、「授業づくりは大切だと思っているけれど、学びが多いとは感じられない」ということが言えそうです。授業づくりの参加者にも学びがある方法を検討していく必要があります。授業に携わる人数、構成あたりも重要な要素になってくるのではないでしょうか。



姫野完治「授業実践に対する教師の「成長観」と成長を支える学習環境」

同じ研究者の方の論文です。

「現状に対する自己認識に基づく将来の成長・発達に対する想定を「成長観」と呼」び、小学校教師を対象にアンケートの結果を分析した研究です。

この研究では、以下の様に年齢構成を分けています。

  • 10年以下を「若手」

  • 11〜25年を「中堅」

  • 26年以上を「熟練」

重要な指摘はここです。

現在の校内研修体制が、中堅・熟練教師が成長するための十分な基盤となっていないことを示唆している。

その要因として2つのことを指摘しています。

  • 中堅・熟練教師の多忙さ

  • 中堅・熟練教師の役割からくる意欲の問題

特に役割の問題は「指導的な役割」を任せられ、授業実践を行う機会の減少した結果校内研究に学びを見いだせなくなっているのではないか。そして、その解決として校外の研究に参加することや書籍等で学ぶことで自身を成長させていくように中堅・熟練教師は進んでいくのではないかという考察がされています。


私個人としては指導的な役割を任せられても成長につながると感じるのですが、「校内研究の授業は若手がやるもの」という場面には相当出会っています。

「それぞれの世代が学べる内容を用意する」という視点では解決は難しく、「世代ごとの学びを共有する」という方向性での解決が図れないものでしょうか。さらに深めていきたいと感じる指摘です。


また、「授業実施に関する活動の今後に向けた課題意識」というアンケートからは若手教師の課題意識も見えてきます。

  • 「子どものつまずきを把握する」項目が高い(これはどの世代も)

  • 「適切に発問する」項目が高い

  • 「子どもの発言を整理して板書する」項目が高い

  • 「挙手や発表の仕方などのルールをつくる」項目が高い

一方で

  • 「発言・挙手しない子どもに対処する」「本じの課題を、既習事項や既有経験と関連付ける」「ノートの使い方について指導する」を課題意識にあげる割合は0%

これらの項目は中堅以降数値が上がっており、若手期においては解決が困難か、優先順位が低い項目だと考えられる。

この点を踏まえて、校内研修を企画したり、若手との授業づくりを行ったりすることも良いのではないか。




紹介は以上となります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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