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掃除は仕事のおまけなのか? ~見過ごされている掃除の本質的価値~

”仕事”は終わった。さっさと掃除して帰ろう。」

こんな声が、あなたの職場でも聞こえてきませんか?
私たちの多くは、掃除に対して「本来の仕事の後に行う、できれば避けたい作業」程度にしか捉えていないのでは?

「掃除」とは、その程度のものなのか。
凡事徹底の先に大きな成果があるとすれば、「掃除」こそ見直すべき対象と言えるのでは?

最近の経験から、私は掃除という行為の本質的な価値に気付き、その認識を根本から覆すことになりました。

その気付きのきっかけは、意外にも中古車を購入したことからでした。
家族が増えたことで、私はSUVから中古のミニバンへの乗り換えを決意。
購入時にはもちろん実車を確認しましたが、その際は「目立った傷や汚れもなく、状態もまずまずの車両」だと判断しました。

ところが納車後、丁寧に手洗い洗車をしてみると、購入時には気付かなかった細かな傷や汚れ、サビなどが目に入ってきました。
もちろん、購入する前は神経を尖らせ、確認しているはず。
では、なぜ今になって細かな傷に気が付いたのでしょうか?
丁寧に洗車を進めるごとに、新たな発見の連続でした。

この経験は、「掃除」という行為の持つ本質的な価値について、私に重要な気づきをもたらしました。

私たちは、掃除という行為を軽視している。

なぜ私たちは掃除を軽視してしまうのでしょうか。その背景には、「効率」を最優先する現代のビジネス環境があるのかもしれません。
限られた時間の中で成果を出すことを求められる私たちは、掃除を「本来の仕事の妨げ」と捉えがちです。
「掃除に時間をかけるよりも、その時間で仕事を進めた方が生産的ではないか」。
そんな考えが、私たちの意識の底にあるのではないでしょうか。

また、清掃業務の外部委託が一般的になったことで、「掃除は誰かの仕事」という意識も広がっているように感じます。
確かに、専門の業者に任せることで、効率的に清潔な環境を維持できるかもしれません。
しかし、それによって失われているものは、もっと大きいのではないでしょうか。

3つの価値

私が車の洗車を通じて気付いた掃除の価値は、少なくとも四つあります。

1.掃除は最も確実な「点検」の機会

自分の手で隅々まで掃除をすることで、普段は気付かない異常や変化を発見できます。
私の車の例でいえば、手洗い洗車という丁寧な掃除があったからこそ、微細な傷やさびの存在に気付くことができました。
「見るだけ」の点検と、「手を使って触れる」掃除では、得られる情報の質が大きく異なるのです。

これは職場でも同じです。
例えば機械設備の清掃は、不具合の早期発見につながります。
普段は見えない部分の汚れを落とす過程で、異常な摩耗や劣化に気付くことができます。
日常的な点検として掃除を位置づけることで、重大なトラブルを未然に防ぐことができるのです。

2.掃除は「改善」のきっかけを提供する

一度徹底的に掃除をすると、その後の変化により敏感になります。
「この前きれいにしたのに、なぜこんな汚れが?」という疑問は、業務プロセスの問題点を発見する重要な手がかりとなります。

例えば私の車でも、特定の箇所に繰り返し汚れが付着することに気付きました。その原因を探ることで、考える力が養われ、使用方法の改善につながります。

同様に、工場の設備で特定の場所に異常な汚れが溜まる場合、それは設計や使用方法に改善の余地があることを示唆しているかもしれません。

3.掃除が「愛着」を生み出す

最も重要なことは、掃除が「愛着」を生み出すということです。
丁寧に掃除をした場所や物には、自然と愛着が湧きます。それは単なる感情的な結びつきではなく、「きれいな状態を維持したい」という積極的な意識となって表れます。
私は納車後のキズを発見した際は一度がっかりとした気持ちになりましたが、何度も洗車していくうちに自然と車に愛着が生まれました。
そして、以前より丁寧な取り扱いを心がけるようになりました。
これは新車でも中古車でも同じ。家庭や職場の設備でも同じことが言えると思います。
つまり、掃除が「モノを大切にする心」を育むことを示しているのではないでしょうか。

掃除によって生まれる好循環

これらの価値は、相互に関連し、好循環を生み出します。
点検としての掃除が異常の発見を促し、その発見が改善を導き、改善の過程で愛着を深める。そして、その愛着がさらに丁寧な掃除を動機づける。
このサイクルは、個人の意識改革にとどまらず、職場全体の環境改善にもつながっていくのです。

一人の”一生懸命”が全体の調和を生む

この好循環は他者をも巻き込む影響力を持ちます。
誰かが丁寧に掃除をしている場所を目にすると、私たちは自然とその努力を尊重し、きれいな状態を維持しようと心がけます。
「誰かが一生懸命掃除をしているのに、自分が汚してしまっていいのだろうか」。そんな気持ち・配慮が生まれてくるのではないでしょうか。
つまり、掃除は全体の調和を創造する力を持っているのです。

ここであらためて、あなたの職場での掃除について考えてみましょう。
それは単なる習慣として形骸化していませんか?
「仕事が終わったから、さっさと掃除して帰ろう」という意識になっていませんか?
もしそうだとすれば、大きな機会を逃していることになるかもしれません。

掃除を「仕事のおまけ」と位置づけることは、非常にもったいないこと。
「掃除と向き合う。」たったそれだけのことですが、その過程で生まれる気づきは、より良い職場環境の維持向上につながっていきます。

私たちに必要なのは、掃除に対する意識の転換です。
「掃除」とは、単なる作業ではなく、点検であり、改善の機会であり、責任感と愛着を育む重要な活動なのです。
この認識の転換が、職場の安全性と生産性の向上、そして働く人々の満足度の向上につながっていくはずです。


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