猫柳 窓

こちらの窓を覗いてみましょう。あちらの窓を開いてみましょう。 ここは空想と現実の狭間。いざ、物語の世界へ。

猫柳 窓

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最近の記事

感情のない男(ショートショート)

歳を重ねるたび傷は増えていく。 癒す間もなくまた傷がつき それでも歩みを止めることはできない。 満身創痍で進み続けるうち いつしかなくしてしまった。 みんなが笑っているとき 何がおかしくて笑っているのかわからない。 みんなが悲しんでいるときも 怒っているときも喜んでいるときも 感動しているときも僕には理解できなかった。 でもそんな自分を認められなくて まわりの人間に知られるのも 怖くて必死にまわりに合わせた。 僕は感情のない男。 人として大事なものが欠落していると思

    • 人間が30歳になったら女→男に性転換する生き物になったら、というお話

      人間は進化する。 生物の中には昔から一生のうちに性別が変わる 「性転換」というものがあった。 そして人間もみな女で生まれ30歳を過ぎたら 男に「性転換」する生き物となった。 女性は30歳まで学業と出産に専念する。 そして30歳を過ぎたら男性となり働くことに専念する。 少子高齢化の問題は解決。 労働力不足の問題も解決。 みな平等に学び、平等に働く機会が与えられた。 人々は真の男女平等を手に入れたのだ。 だが、私は30歳を過ぎても「性転換」できずにいた。 「ホルモンの異

      • 僕と弟と海の思い出(ショートショート)

        「おにぃーちゃーん!まってー!」 「早く来いよ!陽太!」 幼い兄弟が砂浜を駆けている。 「いたっ!」 弟が砂に足をとられて転んだ。 兄が駆け寄る。 「大丈夫か?」 「うん、大丈夫……」 今にも泣きそうになりながら弟は涙を堪えて言った。 「だって、おにいちゃんがいっしょだから。  僕たち兄弟はふたりなら最強だっておにいちゃん言ってたでしょ?」 「そうだよ!オレ達兄弟は最強だ!」 「最強だ!!ぼくもういたくないよ!」 「さすがオレの弟!さぁ、行こう!」 兄弟は手をつないで砂

        • 雨上がりの虹(ショートショート)

          雨上がりの空に虹がかかった。 あまりにきれいで無性に泣けてきた。 思えば自分は、大切なあの人を亡くしてから下ばかり向いて歩いていた。 「……ありがとう。」 涙を拭って、前を向いて歩きだす。