介護ってなんなんだろう⑦
母の施設入所を断念した。
重度認知症でも受け入れ可能、薬の効果で症状が出ていないのであれば大丈夫、との施設が数ヶ所あり介護士の雰囲気や交通の便の良さ等で決めていた施設があったが、ちょうど施設関係者との面会の日時の前から度々熱を出し調子が悪く入所を引き延ばししましょう、と提案された。
様子を見てお母様の調子の良い日にちに変更しましょう、と言われたが前々から「高齢だし調子が不安定なら無理して施設に入所しなくてもいいと思うよ」と保険会社の元同僚や私の住居地の役所の人権相談員からのアドバイスに揺らぎやむを得ずこちらからもう施設入所はお断りします、との返事をさせていただいた。するとその旨を病院にも伝えておきました、という。
私の自宅から片道約2時間の距離。計5ヶ所介護施設を見学した。多くの人はせいぜい1、2ヶ所で決めるだろう。何せ今現在自分が住んでいる地域ではないので大変だったが決して無駄なことではなかった、、と思いたい。
今まで他人事と思っていた介護施設の様子がわかり勉強になったとは思う。
同じタイプの施設でも料金だけでなく設備や部屋の間取り、環境や介護方針等すべてにおいて全く違う。決め手はやはり“人”である介護に携わる関係者ではないだろうか。たった数時間の見学ではわからない面もあるだろう。施設側だって自社の施設の良い面を特にアピールして入所者を集めたいだろうから。
正月休み、およそ一年ぶりに母と顔を合わせた私の娘。病院を訪れる前の娘は「おばあちゃん私のことわからないよね、、」と及び腰だった。母に私から◯◯(娘の名前)来たよ、と声を掛けるとうつらうつらしている中ほんの少し反応したような。娘は「泣けてくる~」と目を潤ませながらも「今日会いに来てよかった」と言っていた。
しかし娘が病院に行ったちょうど一週間後の夜中、病院からの着信あり。翌日の朝まで気付かず慌てて折り返し電話をした。
すると母の担当医が、夕べ自分が当直だったが母が熱を出して昏睡状態、食事の量も減り弱ってきている。今日病院に来れますか?とのたまう。
「えっ、今からですか?」
もしかして危篤?それとも、、?
なるべく早く到着するようこれから伺う旨を伝えて電話を切る。たまたま夫も家にいてどうした?と尋ねるが私も動転し詳しく状況を聞いていないことに気がつく。
すぐ弟に電話すると「死んだの?」と聞かれたが「そうかもしれないが詳しいことはわからない」と答えてすぐ支度をして先に病院に向かうよう伝えた。夫いわく亡くなったらはっきり言うと思うけどとりあえず行ってみたら?慌てないで、と送り出される。
待合室で担当医からの説明を受ける。
ぜひ危篤の前にお顔を見ていただこうと思いまして。はあ。だいたい1~2週間おきに顔を見てはいるんだが。
ということは、、生きてる?
今までも担当医の「危ない状態です」という電話が何度かあった。「危ない危ない詐欺」である。後から患者の親族に聞いていない、と言われないためであろうが。
母の状態と現時点の処置の説明があり、寝たきりで食が進まないので栄養分を取る処置をするかどうかを聞かれる。せめて亡くなる前は苦しい思いをさせたくない。なるべく栄養は口から取れるようにして余計な延命処置はしなくてよい旨を伝えた。
待合室から病室へ移動。
母は鼻に酸素チューブを入れられ薄目を開けていた。後からまさかこちらが施設入所を断念したから病院での介護を放棄にするということか?と疑問を抱いてしまった。
そうではないことを願いたいが娘が面会してから約一週間、あまりにも急に悪化している気がした。
一昨年の秋頃からデイサービスの送迎車の中で暴れる一件があってから一年と数ヶ月。
昨年夏頃は薬の効用もあったからなのか入院当初よりだいぶ症状も落ち着き、会話も出来ていたし食欲も旺盛だった。その時期早急に施設の手配をすればもっと長くADL(日常生活動作)が保たれたと思う。
今となっては遅すぎた。
病院のソーシャルワーカーから退院後自宅での介護が無理ならば入所する介護施設を決めておくように、と言われた際弟が自宅介護時のケアマネジャーに相談すると、私はあまり施設のことは詳しくないし自宅介護以外はもううちの担当ではない、と話していたと聞いていた。しかし時折早くから特養を申し込んだ方がいい、と告げられたと聞いてもいた。ケアマネはずっと心配していたはずだが弟とのコミュニケーションが巧く取れていなかったのではないか。
私が当初のように頻繁にケアマネと連絡し相談すべきであった。
後悔先に立たず。
「弟さんにご連絡したらそれはお姉さんに聞いてください、と言われまして、、」
今までデイサービスやケアマネ、病院の医師やこれからお世話になったはずであろう介護施設の担当者等、いろんな方々に母の介護を協力していただくはずの方々に私の知らない場面でも不愉快な思いにさせていただろう。
介護のキーパーソンをやむを得ず弟にしても結局人からのアドバイスを理解出来てもそれを考え実践出来なければアドバイスが活かされない。私が彼の代わりにいろいろやるべきか、と相談するとお姉さんの生活があるのだから一人で抱え込まないで、と言われる。
結局母につらい思いをさせてしまった、、。