
こどもの運動能力どう伸ばす?「フィジカルリテラシー」を育む
「子どもに運動させなさい!」
「早くスポーツの習い事をするべき」
「走るのが遅い子はだめだ」
そんな言葉に疲れたことはありませんか?
脅迫めいた言葉は全力でスルーしましょう!
なぜなら、”やらされた”運動こそが、子どもの体づくりにとって悪影響だからです。
そもそも、子どもが運動したほうが良い理由ってなんなのでしょうか。
実は、運動神経を高めスポーツができるようになることではありません。
運動というと、体育やスポーツの一場面を思い浮かべる方が多いのですが、走る、跳ぶといった日常の動きすべてが運動です。
ヒトは体を動かすことで、脳をリセットし、心の状態を整えます。
子どもに運動を推奨する理由、それは「人生を幸せに、たくましく生きていくための力」を養えるからなのです。
この力を「フィジカル・リテラシー」と言います。
フィジカル・リテラシーとは、ヒトが脳とこころと身体をバランスよく使って生きていくための能力であり、スポーツや運動をするうえで基礎となる能力です。
私が米国で研究していた2000年ごろには、スポーツ先進国であるアメリカやカナダ、オーストラリアの学校体育で盛んに提唱されていた言葉であり、これまでの根性論的な訓練や勝ち負けが求められてきたスポーツ教育を見直すうえでも、世界的に注目されるようになりました。
日本語に訳すと、「身体の賢さ」といった意味になります。
フィジカルリテラシーは大きく、3つの能力で構成されています。
1つ目は、モチベーションです。
運動やスポーツは誰かに無理やりやらされるのではなく、子ども自らが探索し興味を持ち、動きたくなる力を育むことが第一歩となります。
2つ目は、身体有能感です。
自ら身体を動かすことで、自分の身体のことや、どう動くことができるのかを感じ、さらに自分が動くと外の世界がどう変わるのかを身体をもって知ること。そういった感性を磨くことで、充足感を得られるようになります。
3つ目は自己肯定感です。
なんだろう? どうしてだろう? という探究心から、動いてみて、発見し、できた! という喜びや達成感を繰り返し経験することで、自分にはできる、諦めずにやればできるという心が育ちます。
この3つの要素がフィジカルリテラシーであり、混沌とした世の中を強く生き抜いていくための、身体と精神の基礎体力となるのです。
そして、この能力は子どもの頃にこそ育まれ強化されます。
未就学児、特に5、6歳の過ごし方が重要とされます。
もちろん小学生でも能力をのばすことができるのですが、学校の体育で「評価」されることが始まってしまうため、純粋に運動に取り組むことが難しくなってきます。
では、未就学児のうちに、フィジカルリテラシーをのばすにはどうしたらいいのでしょうか?スポーツ教室にいれる? コーチをつける?
いいえ、フィジカルリテラシーを誰よりも伸ばしてあげられるのは、他でもない、子どものすぐ側にいる親です!

小学校での授業や、子どもの運動教室を開催すると、親御さんからよく「運動できるかどうかは遺伝でしょう?」と聞かれます。その答えもまた「いいえ」です。
ただ、親に運動苦手意識があると、その子どもの運動機会が減ってしまう傾向があります。子どもにとってもっとも身近な大人である親が運動やスポーツを行っていないと、身体活動の機会やスポーツを見る機会はあまりなく、運動を見て覚える学習も減ってしまうからです。ですが、どんな子も必ず伸びます。運動の発達は遺伝ではなく、たくさん経験することがポイントなのです。また、スポーツの習い事を一種目させるより、いろいろな動きを日常の中で自由に遊びながらすることがよいとされています。親子で身体を動かすことを通して、子どものうちに「フィジカルリテラシー」を身に着けることが、とても大切なのです。
では、親は具体的に子どもにどう接すればよいのでしょうか?
私は20年以上、トレーナー、運動学者として米国メジャーリーグ選手をはじめ、老若男女、障がいのある方まで幅広く運動指導を行なってきました。
その中で、私がもっとも力を注いできたのが、子どもへの運動指導です。
これまでに10万人以上の子どもに運動指導を行いました。その中には後にオリンピック金メダリストやプロ野球選手になった子もいましたが、一流の選手を育て上げることを目標にしていたわけではありません。私が一貫して伝えていたこと、それは、どんな子も「フィジカルリテラシー」を身につけられるということです。
そこには、外してはいけない、たった一つの法則があります。
この法則にのっとれば、どんな子もスポーツや運動を通して、信じられないくらいに成長し、ひとりで強く生きていく力を身につけていきます。反対に、この法則を無視してしまうと、運動が嫌いになったり、ケガをしたりして、スポーツや運動から離れていってしまいます。
親からすると、運動させたほうが良いとは分かっていても、忙しかったり、子どもの気分が乗らなかったりで、なかなかできない、それが現実だと思います。
毎日忙しいママやパパが1日3分からはじめられ、自らの体も変化させることができる親子の運動があります。肩こり解消、腰痛改善、ダイエットなどに効果が期待できるでしょう。
大切な子どものためにも、あなた自身が健康でいられるように、楽しく体を動かして欲しいと思います。子どもは、あなたの普段の行為・行動を観察して大きくなっていきます。親が楽しい姿を見せることが何よりの能力開発になるのです。
子どもの記憶は非日常的であるほどに強く永遠に残ります。
靴下を履き歯を磨いたことは忘れても、大好きなママやパパと、ゲラゲラと笑い合いながら一緒に体を動かした記憶は生涯忘れません。それは、のちに運動習慣となり生涯スポーツを楽しむ素養となり、子どもの人生の選択肢を広げてあげることができるのです。
今しかない子どもの成長の時を楽しみ、そして、大切な我が子に、フィジカル・リテラシーという生きる上でもっとも必要で、最強の能力をプレゼントしませんか?
次回、フィジカルリテラシーを育むたった一つの法則をご紹介したいと思います。