after allにご用心!? ━第362回TOEIC L&R公開テストより
2024年8月25日(日)午前にあった第362回TOEIC L&R公開テストでafter allの知識を直接問う設問があったようです。メディアビーコンさんの振り返りYouTube動画でも取り上げられているし(12:18〜)、
有名TOEICerのwada🍐わだぽえさんも言及されていました。
実のところ、私も◯十年前の受験時代より長らくafter all=「結局」と思い込んでいたものですが、それよりも実際には「だって〜だから」という補足的な理由説明の方がよく使われているくらいなんですよね。そのことが、ここのところ私がnoteでよく触れている『大学入試 飛躍のフレーズ IDIOMATIC 300』でも204の課題文とコラムで大きく取り上げられていました。
今回のTOEIC公開はまさにそこを問うものだったのではと思われます。当日受験された方でこのような投稿をしている方もおられました。
そこでここでは現在の代表的な受験英熟語帳でafter allをどう扱っているかチェックしてみましょう!
まず武田塾の「ルート」にも入っている上の『速読英熟語』。こちらではafter allは見出し語になっておらず、in the long run「長い目で見れば、結局は」の類義語として載っていました。しかし、これは英和辞書『WISDOM』の説明で明確に否定されている、かなり問題のある記述と言わざるを得ません。
また、もう一つの有名どころの『英熟語ターゲット1000』の方を見てみると、
「結局」と「やっぱり」の両方を載せてはいました。ただ例文は前者のものしかなく、むしろ最近出題率も高い後者との使い分けがないのは不安なところ。ターゲット1000を使用している受験生にはしっかり注意喚起が要りそうです。
さらにこの熟語帳の長文付き速熟スタイル『英文で覚える 英熟語ターゲットR』ものぞいてみると、
「結局のところ」の用法として掲載されているのですが...これは、文脈上、「だって〜だから」なのでは?つまり「だって、叔母は何時間もかけて、今流行っていると叔母の思う、あなたが欲しがっているだろう贈り物を選んでくれたのかもしれないのだから」といった風に、贈り物を捨てるのが憚られる理由を述べているととるのが自然だと思われます。
さらに言うと、その後ろのhowever以下の文脈も重要で、こちらこそが筆者の言いたいことだとすると、これは『IDIOMATIC 300』のコラムに書かれている「代弁・譲歩用法」の典型でもありそう。つまりafter all直後の文は、however以下の筆者自身の主張の前に、贈り手側のお気持ちを代弁する流れだったのだと。それにしてもこんなことまで書いてあるIDIOMATIC、おそろしい子!
ということで、現在の代表的な大学受験熟語帳もafter allの扱いは大いに疑問が残りますね。。
なお、この理由の補足説明のafter allに関しては、長文問題集の中ではありますが、関正生先生の『The Rules1』が、いきなりLesson1問1の解答根拠に絡む形で「だって〜だから」の用法を解説してくれています。
最後に、after allときいて個人的にまず想起するこのシーンを紹介しておきましょう!
映画『風と共に去りぬ』"Gone with the Wind"ラストのスカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)の台詞。日本語字幕の一つでは、字数の関係もあるでしょうが、after allを訳さず「明日に望みを託して」となっているようです。
ここは場面上、スカーレットの人生は、波瀾万丈、いろいろあったけれど、"Tara! Home. I'll go home. And I'll think of some way to get him back. After all, tomorrow is another day."という文脈。ここのafter allは決して「結局」ではないでしょう。
マーガレット・ミッチェルの原作小説にも該当箇所があって、そこを訳者の鴻巣友季子さんは、
と訳されていました。
after allのニュアンスをしっかりと汲んだ、それでいてなんともすっきりした日本語訳。この印象的なラストの原文・鴻巣訳をおぼえておけば、TOEIC・大学入試などの文法問題も十分対応できそうですね!