見出し画像

人生を変えるバカンス

私は2010年の夏、国際ラリーに参加した。
と言っても、特別な競技ライセンスの必要がない草ラリーである。
お金は10日間で下手したら現在の年収を超える位かかるのだけれど、なんというかラリーの神様に魅入られちゃったのである。

1日に650kmとかこんなところを走る

「Rally Raid Mongol」という大会は出たいと思った2002年、機材の老朽化を理由に大会自体が終わってしまった。

この年、実は富山医科薬科大学の伝承薬の研究チームがモンゴルのフィールドワークに出かけて砂漠で薬草の採集活動などをしていたらしい。「らしい」というのは私は別の薬科大学の学生だったからなのだけど、やっていた先生は私もお会いしたことのある方だ。伝承薬のフィールドワークの分野では割と活躍している先生である。もし富山の学生だったら自分も行けたかもしれないのにと本当に残念に思った。

冒険や研究にあこがれる二十歳前後の私は「中国の秘境に薬草を探しに行く」みたいなことをやりたかったし、そこから新薬の開発などもやってみたかったから大学院で富山医科薬科大学を受験する打診をするためにこの調査に出かけた先生に会いに行ったこともある。

砂漠のオアシスに生えるEphedra intermedia 
漢方薬の原料生薬の”麻黄”
貴重な野生の姿

結局、もろもろの事情で進学自体が無くなってしまったのでそれならばあの大会に出てみたい・・・ という事でゴソゴソ準備をしているうちに大会が復活して参加できることになった。岩崎弥太郎ではないが「チャンスが来た時にものに出来るための準備はしておかなければならない。」ということである。

SSスタート(走破タイムの計測開始地点)
ここはモンゴルの幹線国道?なのだそうだ
青看板は世界共通らしい

準備段階から色々あったのだけど、結局8年かけて作ったつながりが私をゴールまで導いてくれた。

実は途中で主催者サイドから自走を断念するように働きかけがあったのであるが、一番最後をトラックで走っているモンゴル人スタッフ(彼は日本語が堪能)が「どうしても無理そうなら問答無用で回収するから」と自力で走りたい私に仕方なく付き合ってくれたのである。

トップライダーが約8時間で走り切る道のりを私が走ると大体14-16時間かかる。バイクの性能も、バイクを操る人間の性能も劣るからどんなに頑張っても途中で日が暮れてしまう。日が暮れるとよりいっそう走るのが遅くなるからお付き合いするスタッフからは苦情も出たし、本部からの指示で私を含む数人の参加者は日暮れ後に正規のルートではない迂回路を走ったりもした。それでも私のわがままに付き合って走らせてくれた主催者、特にスイーパーには本当に感謝している。


吹っ飛んじゃった人
ハンドルが変な方向を向いてしまっている
この人は帰国後1か月経ってから脳内出血で入院したけど
後遺症がなかったのは不幸中の幸いだった
最終日ゴール後のパーティ 表彰式もある
公用語は日本語とモンゴル語と英語
この年はモンゴル人・日本人・韓国人とカナダ・ドイツからエントリー

この大会、スタッフの交通費などは参加者のエントリー費で賄われるのだけどそれ以外は手弁当の恐るべきイベントである。ちなみに参加者はリタイアできるけどスタッフはリタイアできない。正直言って参加者よりスタッフの方が大変なのだが、ラリーが大好きな大会経験者が入れ替わりで運営している。そんなわけで運営サイドの半分以上の人は8年の準備期間中に知り合った友人知人でリタイア経験がある人も多かったから、なんとか私もゴールさせてもらえた感じがする。

体力的にも経済的にも運営側の状況をみても、もう2度と私が参加することは出来ないだろうけど叶うならもう1度走りたいと思う。
願わくばトゥアレグやUAE、ロシアンラリーやダカールシリーズだって行ってみたかった。

でも、こののち私はそれまで自分の希望を捻じ曲げてやっていた仕事を辞めてあまりお金にならないことをはじめてしまった。それは、伝承薬の研究につながっていくような仕事で私は1周回って戻ってきた感じである。
今後、伝承薬や伝統医療の関係で再び砂漠に赴く日が来るだろうか。
そんな日が来ることを楽しみにしている。

主催団体:SSER organisation   https://www.sser.org/

#行った国行ってみたい国  #モンゴル #ゴビ砂漠

この記事が参加している募集

頂いたサポートは創業融資の返済に充てさせて頂きます。