「場」をつくる
irodoriHOMEという場所を6月から始めました。
建て付け上は就労移行支援事業所と多機能型で展開する「生活訓練」という事業体です。
HOMEと名付けているのは、文字通り一軒家をお借りしているからです。
もちろんそれ以外の意匠もなくはないんですが、それはまた別の話なので置いておきます。
もともと就労移行支援事業所単体でやっている頃から、どうしても「就労」の部分だけを切り取って支援をする、ということに矛盾を感じていたので、自分達の事業は「就労するため」の支援ではなくって、就労を含め「社会で生きていくため」の支援をする場所として運営してきました。
就労移行からひとり暮らしの練習としての住居支援を始め、ライフステージを支援するための婚活支援なんてものを始めようとしていたり、定着支援という支援が切れた後のサポートなどについても、一旦不格好ながら社会に出た後の人生や生活のフォローのインフラのベースは、整備が出来そうな目処が立ったこともあって、今度はそれこそ社会生活を送るための「生活」そのものにしっかりとサポートをできるような資源が必要だな、という思いから生活訓練を手掛けることにした、というような経緯です。
少し話が逸れるんですが、就労移行の事業をしている中で、ものすごく嬉しいことなんですが、割と就職した卒業生がうちは頻繁に出入りします。
どうしても当事者の方の生活圏域って狭くなりがちで、下手をすると家と職場の往復ばかりの毎日になりかねない方も少なくはないんですね。
そしてそれが孤独感や孤立感を生んでしまうので、対症療法的ではあるけれど、サードプレイス的な「いつでも来たらいいよ」という感じの、たとえ就労されてからも利用者さんにとって「居場所」でありたいという価値観が結構強く横たわっています。
つまり僕らが生活訓練という事業をする上では、訓練の場であると同時に「就労などでサービスを卒業した利用者さんの居場所になる」という性質を持つ必要があるんです。
これから生活訓練を経て社会に出て行く利用者さんも出て来ると思うので、その時に就労移行と同じようなサードプレイスとして存在する事を前提として場づくりを設計していくわけです。
でも、それだけじゃないんです。
もうひとつ、このHOMEには果たしたい役割があって。
それは「今まで支援の手が届いていなかった方の入り口になるような場所にしたい」というものです。
成人期の引きこもり、いわゆる福祉サービスの受給要件を満たしていないけれど何かしらの生きづらさを抱えている、など、いろんな事情や状況によって今まで支援をなかなか受けることが叶わなかった方の支援の入り口になるような、そういう場をつくりたいと考えています。
難しそうですよね。
入口の場であり、訓練の場であり、そして巣立った後も続く居場所になるような場。
多機能すぎるだろ、と思われるかも知れません。
どうやって棲み分けるんだ、と思われるかも知れません。
でも、これは支援者だから感じることかも知れませんが、レベルごとの棲み分け、対象ごとの棲み分け、目的ごとの棲み分けを過度に進めていった結果、今どれだけ福祉や支援の分断が起きてきたのかを知っているからこそ、それ故に、当事者の方の成長の機会も適応の機会も奪い続けることの弊害を知っているからこそ、陸続きの場をつくることがどれほどの支援になるかを理解しているつもりです。
とは言えこういう場づくりは全く初めてなわけではなく、今まで就労移行の現場のど真ん中に立っていた頃やってきたことなんです。
今回の僕の課題は、それを僕がプレイヤーとして場づくりをする事ではなくてスタッフが中心になって作り上げていくことをサポートすることです。
よく言う「自分でやった方が早い」の理屈で場所を作ることは確かに確実性が高いかも知れません。
もしくは手取り足取りして一から十まで指示をしてさせるのも、手間はかかるでしょうが精度は高いかも知れません。
でも、そうじゃないカタチで間接的に介入しながらこういう場を作り上げる経験をきちんとスタッフに積ませることもとても大切なんです。
今は僕の手がけている事業自体は決して規模も大きくありませんし、手も目も届きます。
だから今、スタッフに中心に立ってもらいつつそれをバックアップしながら場づくりの経験値を積んでもらうことができるんだと思います。
一応ながら僕はスタッフが活躍できるための「場」をつくることも大事な役目なので、スタッフ達が最高のHOMEを作り上げられるように、丁寧に任せながらバックアップしていきたいと思います。
そういえば生活訓練の事業の少し踏み込んだところについてこんなにきちんと書いたのは初めてかもしれませんね・・・。
改めて、irodoriHOMEをどうぞよろしくお願いします。
いい場にしようと思います。