こども一人ひとりが「クリエイティブの木」、ゆっくり丁寧に育てよう。
不変的で普遍的な本質。
人生って、よく「木」にたとえられます。偉人や芸術家の名言や、ことわざなど「木」で表現された素敵な言葉がいっぱいありますね。
なぜでしょう?
これはレオナルド・ダヴィンチの名言ですが、木だけじゃなくて、自然界のものはすべて、どんなときも原理原則で生きている。
そんな自然の「不変的で普遍的な本質」の部分を、人は感覚として人生に見出しているんだろうなって思いました。
(そもそも、「木」は、みんなの身近にある、自然の象徴的存在だし。「木」が嫌いな人なんていないし。)
クリエイティブ教育とは、
こども一人ひとりの『クリエイティブの木』を育てること。
かくいう私も「木」でたとえがちなのですが。
提唱する『こどものクリエイティブ教育』や『教養の大切さ』を「木」にたとえて説明させていただくことが多いのです。
すると、なるほどー!となりやすい。
ということで、これまで約1,800件のワークショップやキッズコーチングで、こども達との関わり、対話をすることで体系化できた「クリエイティブの木」について、もっと上手に説明できるように、自分自身の整理も兼ねて綴ってみました。
たぶん長文になるけど、読んでほしいです…
①『根っこ』を育てるフェーズ : 教養・体験
木は、上に伸びる前に、下に伸びます。大地に広く深く強く根を張ることで、木は上へと伸びて、丈夫な幹と枝葉が育ち、美しい実や花を咲かせます。
こどもも同じ。未来へと大きく伸びやかに育つためには、大地に根を張ることが大切。その根を張るために必要なのが『教養』と『体験』です。もう、めちゃくちゃ大事。
成功体験も失敗体験も、面白い・楽しい・美しい・怖い・辛いとか、好き・嫌いとか、感情が動く『体験』。
そして、面白い!もっと知りたい!学びたい!なぜだろう?という好奇心や探究心を掻き立てられる『教養』。
ポイントは、感情の動き・好奇心・探究心が伴うことです。
『教養』とは、誰かの解釈、多様な価値観・世界観を知り、自分を知り、自分との「同じ・違い」を知り、またそれらを楽しむことで、正解・不正解の枠を超えて、広く深めていくもの。
そうして『教養』を身につけることは、こども達の未来に起こりうる様々な出来事に対して、心豊かに生き抜く「考え方」「在り方」と「自信」の土台作りであり、
迷った時・壁にぶつかった時に「自分が何者であるか?どこにいるのか?」に立ち返ることができる土台作り、それが大地に根っこを強く張ることなんだって思うんです。
まとめると、
『根っこ』を育てるフェーズは、教養と体験から
を、じっくり丁寧に、繰り返し何度も時間をかけて育むフェーズです。ここでは様々なジャンル、多様な教養・体験に触れるきっかけを作り、可能性を広げていくことが大切だなって思います。
②『芽生え』のフェーズ : 好き・興味・なぜ?
教養・体験を広げ深めていくことで、少しずつ、あるいは運命的に、こども達は自分のワクワクや好き・嫌い、興味の方向を知り(自己理解)、
など、自分の「好き」や興味・探究心を深めたくなるものに出会います。このタイミングが、今度は木が上へと伸びてゆく『芽生え』のフェーズ。
好き・興味・なぜ?との出会いは、いっぱいあってもいいし、ひとつだけでもいい。いずれにしても見逃さず、次のフェーズに繋げる「フック」です。
このフック=『芽』を
ことが大切なんです。
こどものキラキラ・ワクワクを、しっかりキャッチしてあげてください。
③『幹』を育てるフェーズ : 感性・価値観
『芽生え』のフェーズを経ることで、こども達の「自己理解」は深まっていきます。
という「なんとなく」の気づきに対して、『幹』を育てるフェーズでは、
を感じてみる・考えてみることが大切です。
自分の好き嫌いや興味の理由や意味を理解する。また、教養で触れた「誰かの解釈、多様な価値観・世界観」と、自分の意見や考えの同じところ、違うところを理解し、『自分だけの答え』があることを知る。
体験が感性を育て、教養が知性を育て、自己理解・他者理解を深めることで、『自分だけの感性・価値観』を形成していくのかなって思うんです。
④『枝葉』を広げるフェーズ : 想像・探究
大地に広く深く根を張れば、風が吹いても折れない強い幹が育ち、空いっぱいに自由にのびのびと枝を広げ、葉っぱをつけていくことができます。
『枝葉』を広げるフェーズは、自分の感性・価値観を軸に、自由に好奇心いっぱいに『自分だけの答え』を見つけるために、
を「楽しみながら」育むフェーズです。
楽しむことがとにかく大事だと私は思っています。すべての学びの基本である『考える・調べる・気づく』を主体的に楽しむことができたら、何歳になっても「学びの楽しさ」はずっと忘れないだろうなって。
根っこ、芽生え、幹を大切に育ててきたからこそ、できるのが
もうひとつ、大切に育みたいのが『①仮説 → ②検証 → ③気づき』の基本ステップ。『自分だけの答え』を見つけるためには、ただ調べるだけじゃなくて、自分の感情・考えをアドオンすることって大事だと思うんです。
「仮説」を立ててから調べることで、得る「気づき」は多く、深くなります。ちゃんと「気づき」があることで、そこから新しい「好き」や興味・好奇心のタネ(新しい教養や体験に繋がるタネ)を見つけたり、丁寧に感情の動きを感じることで、さらにブレない『幹』=感性と価値観が育っていき、
次のフェーズへ繋げるモチベーションになるのです。
⑤『実や花』を咲かせるフェーズ : 創造・世界観
『クリエイティブの木』は、自由にのびのびと丈夫な枝を広げたら、必ず美しい花や実を咲かせます。
『実や花』を咲かせるフェーズは、これまでじっくり丁寧に積み重ね、育んできた、教養や体験を土台にした自分だけの感性・価値観を軸に、自由に広げた想像や思考で見つけた『自分だけの答え』を創造するフェーズ。
という『クリエイティブ』のフェーズです。
根っこ→芽→幹→枝葉は、言わばこどもの「内側」を育て、磨いてきました。その「内側」を「外側」に創造・表現するのが『実や花』なのです。
感性・価値観=自分だけの「内側」を「外側」に表現・創造したときに、自分だけの『世界観』になるのです。
丁寧に「内側」に向き合い、育ててきたら、自ずと表現・創造したくなるし、どう表現したらいいか?どう創造するか?の答えも解かっているというか、もう「できる」はず。
ここで学ぶとしたら、アウトプットの多様性。
自分だけの答え、自分だけの『世界観』を創造・表現する手法が、絵かもしれないし、言葉かもしれない。ダンス、パフォーマンス、文章、論文、ビジネス・・・なんでもいい。未来にはもっと無数にあるかもしれません。手法すら自分で生み出すこともできます。
どんな手法だったとしても、自分だけの答えを創造するために必要なスキルやツールは、すぐに学び、すぐに手に入れることができるはず。
大切なのは、それまでに培ってきた『自分だけの答え』を創造する「理由」や「意味」=感性・価値観(内側)だから。
でも、表現・創造しなくちゃ、誰にも伝わりません。アウトプットして初めて、誰かの役に立ったり、助けたり、救いになったり、喜びになったり、新しい価値を生み出すことになるのです。
で、こども達が表現・創造した自分だけの答え=価値観・世界観が、今度は誰かの「教養」や「体験」になって、誰かの「クリエイティブの木」の根っこに繋がる。
って想像したら、素敵だなって思いませんか?
私はずっと絶えず、育ち続ける無数のクリエイティブの木で、地球が覆われて、大地で根っこが繋がっていたら、凄く凄く素敵だなって思うのです…(急にロマンティスト)
世界でひとつだけの「木」を育てよう。
『クリエイティブの木』は、こども達一人ひとり違う木です。世界でひとつだけの木。ふたつとして同じ木は存在しません。
生まれた環境や育った環境、教養や体験が違えば、当然そこから育つ感性や知性、形成される価値観が違いますよね。ということは当然咲かせる実や花も違うんです。
クリエイティブの木は、こども達それぞれの個性であり、アイデンティティ。
だから、みんなと同じ結果や表現、答え(実や花)を求めないでください。違って当然、違うから素敵なんだと、こども達にも教えてあげたいです。
また、成長の時間もそれぞれ違います。
『根っこ → 芽 → 幹 → 枝葉 → 実・花』の5つのフェーズは、どのフェーズに何時間とか何日かけて次へ進む、というひとつの正解はありません。
すぐに実や花を咲かせる子もいれば、ゆっくりじっくり根っこを育てる子もいるし、枝葉をいっぱいに広げることを楽しむ子もいます。
たくさんのクリエイティブの木を育てる子もいれば、一本の大きな木をじっくり育てていく子もいます。
根っこの深さ、芽生えのタイミング、枝葉を広げる大きさ、実や花の種類も咲く時期も、それぞれ違うから、正解はないんです。というか、全部正解。
だから誰かの成長と比べる必要なんてないし、遅いことを心配して、水や肥料を与えすぎたり、手をかけすぎたりする必要はありません。
一人ひとりのペースとタイミングを見守りながら、自然にピュアに育っていくことが『クリエイティブの木』には大切な環境なのです。
ゆっくり、じっくり、焦らずに、こどもを信じて、表情や感情を丁寧に汲み取りながら、クリエイティビティを育てていきたいですね。
まずはたくさんの『経験』と、あらゆる『教養』に出会うきっかけをいっぱい作ってあげてほしいです。
WiSE KiDS LaB
田嶋 樹里