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【実体験あり】他人に発達障害を告白するメリットとデメリット

発達障害のカミングアウトは諸刃の剣です。

全て吐き出してしまった方が楽になるケースもありますが、人間関係が悪化することもあります。私自身、メリットとデメリットの両方を経験しました。

今回は発達障害の当事者の立場から、カミングアウトの是非について考察します。

※記事と同じ内容をラジオ動画でもご覧いただけます。


カミングアウトのメリット

私が感じたカミングアウトのメリットは、理解者ができることによる安心感です。

心の底まで理解してもらうことは難しくても、自分が普段何に苦しんでいるのか、これまで何があったのか、それを知っていてくれる人がいるだけで救われる気持ちになります。

実際、私はごく親しい友人にASD/ADHDのことを伝えたのですが、とても心が軽くなりました。

この安心感がどこから生まれるのか自分なりに考えてみたのですが、相談相手との心理的な結び付きが強くなる(と勝手ながら感じる)ことなのかなと思います。

やはりカミングアウトをする前は、心のどこかで「告白することで、万が一、友人の自分を見る目が悪い意味で変わってしまったらどうしよう」という小さな不安はありました。

私としては、そのような悲しい事態が起こり得ないであろう、信頼できる友人を見定めて告白しているわけですが、それでも緊張はします。

告白している最中と告白した後は、体が小刻みに震えていました。仲の良い友人だからこそ、予期せぬリアクションがあったら怖いという感覚です。

ただ、そのような心配は杞憂に終わり、今は安心感に満たされています。伝えて良かったと感じていますし、絆が強まる感覚がありました。

実際には、絆うんぬんは私の主観に過ぎませんが、少なくとも私はとても嬉しかったですし、私の心が楽になったことは事実です。

いずれにしろ、何でも話せる人がいることは、心の平穏につながると思います。

このあたりに、カミングアウトのメリットはあるのかなと想像しています。

カミングアウトのデメリット

私が考えるデメリットは、以下の2つです。

・人が離れる
・偏見や差別を受ける可能性

それぞれ説明していきます。

人が離れる

私の実体験ですが、発達障害の診断を受けた後、婚約者が離れていきました。

当時、私は会社員生活のストレスで抑うつ状態になっていたのですが、病院にいった際に発達障害の診断が加わりました。

そのような状況を見て、彼女はこれ以上一緒に過ごしても上手くいかないと判断したようです。

ここで断っておきたいのは、彼女は診断名そのものに嫌悪感を抱いた訳ではありません。

以下のような要因が絡み合った結果です。

・彼女のお父様が、発達障害について現場的な知識を持った方だったこと
・彼女のお母様が「何より娘を共倒れさせたくない」という立場だったこと
・彼女本人が、ネットで障害のことを調べるうちに不安になったこと
・付き合った期間が短い(2年ほど)

彼女の下した判断は、私にとっては辛いものでしたが、賢明だったと思います。

現実的な問題として、発達障害を持つ人が健康に働くことは簡単でないと思いますし、結婚生活に不安を感じるのも無理はないからです。

相手側からすると、おそらく「可哀想な事情はあるけれど、生活ができないのなら難しい」という心情だったと思います。

このエピソードが適切な例なのかは分かりませんが、カミングアウトがきっかけで人が離れる可能性はあります。

偏見や差別を受ける可能性

私の肌感覚ですが、発達障害に対する世間の風当たりは強いのかなと感じます。

例えば、有名人が何らかの問題を起こした際、あるいは何らかの刑事事件が発生した際、ネット上で以下のようなコメントが見受けられます。

「この人は発達障害ではないのか?」

なんとなくですが、貶し言葉の1つとして「発達障害」や「ADHD」という言葉が使われている気がします。

これらの意見はTwitterやYouTubeで目にするものなので、実際は少数派の意見なのかもしれません。

ただ、目に見える誹謗中傷をしない人でも、潜在的な差別意識を持っている人はいるでしょう。

うつ病でさえ「ただの甘え」だと解釈されることがある世の中なので、新しい概念である発達障害が理解されないのも無理はないのかなと思うからです。

また、差別とまではいかないまでも、「心の障害?なんか怖い。関わらないでおこう」と考える人は一定数いると思います。

人間は知らないもの、理解できないものを恐れると言われるので、こういったケースもあり得ると想像しています。

ここで1つの例として、職場における偏見と差別を考えてみます。

先ほどの私の仮説が正しいとすると、職場の同僚すべてが、メンタルヘルスに理解がある訳ではありません。

そんな中、あなたが「実は発達障害なんです」と、職場でカミングアウトするのを想像してみてください。

露骨な差別は受けないとしても、変に気を使われて逆に居心地が悪くなることはあるでしょうし、そうなると余計なレッテルが増えるだけです。

今後のキャリアに影響する可能性もゼロではないでしょう。

ここまでの私の話は、全て可能性ベースの話ですが、カミングアウトのリスクとして考慮した方が良いとは思います。

【補足】
私は問題行動を起こす人を擁護したい訳ではありません。

ただ、上の例のように、「厄介な人=発達障害」と結びつける風潮がある以上、カミングアウトには慎重になった方が良いとお伝えしたいだけです。

カミングアウトのポイント

私自身の経験を踏まえて、カミングアウトのポイントを2つ考えてみました。

最終的にはご自身の意思が大切ですが、もしよければ参考にしてみてください。

ポイント1. カミングアウトする目的を考える

明確な目的もなくカミングアウトするのは、リスクしかないと思います。

そのため、「カミングアウトしたい」という思いがあるのなら、自分がなぜそう感じるのかを考えてみてください。

精神的な安定を得たいのか、業務上の配慮が欲しいのか、まずは自分の考えを整理することをおすすめします。

その上で、メリットとデメリットを天秤にかけてください。

発達障害に限った話ではありませんが、何かしらの疾患や障害をカミングアウトしたことが原因で、仕事を失うといった話も聞かれます。

そのため、実行に移す際は、慎重に慎重を重ねるくらいがちょうど良いと思います。

ポイント2. 相談相手を吟味する
相手の選び方に正解はありません。本当にケースバイケースだと思います。

ここでは参考までに、私の考えをご紹介します。

★相手の基準
・秘密を守れるかどうか
・柔軟でしなやかな考えを持っているか
・親しい間柄かどうか
・頭ごなしの否定をしない人か

世の中には色んな価値観を持った人がいて、それぞれに悩みを抱えている…。そういった認識を持っている方が良いと思います。

悩みごと自体を深く理解できる人というよりは、「わからないけれど、そういう悩みを持っているんだね」とただただ受け入れてくれる人です。

おわりに

発達障害のカミングアウトは、個人の状況や目的によって慎重に判断すべきです。

理解者を得られる喜びがある反面、人間関係の変化や偏見のリスクも存在します。

一人で抱えきれない思いがあると、ついつい吐き出したくなってしまうものですが、カミングアウトには慎重になってください。

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