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【詩】蒼茫(SOUBOU)

S そんなことを考えながら

どんなことか は これから始まるのだという予感をポケットに突っ込んで
改札を出て 
昇りエスカレーターで運ばれる多くの瞳を横目で見ながら
階段を降り 動く歩道に乗ってそれが途切れた途端に
巨大なドームのような天井に覆われた広い構内の左手に
銀行や本屋さんや喫茶店の入口が続いて 右手には
デパートのショーウインドウの中で からくり仕掛けの人形が微笑んで 
それは僕の想像だと 多分
小さなマイクロチップがどこかに入っているけれど その人形はちょっと

O 大き過ぎないか

その前を通り過ぎる人々は皆 
足を交互に動かして 歩いて
誰もが表情を見せて自然で
今という現実を忘れて
何かを見ているのではなく
ただ前を向いて
瞳を明るくして
瞳孔に光を落としているだけで どうしてその行為に

U 後めたさを感じないのか

一秒前が一秒後と連鎖していて
それが永遠に続くのだろうかと疑問に思う人間は
見渡す限りいない
みんな顔の形が違うし 
体型も 見ているスマホの画面の模様も違うのに
語る言葉の音色も 声の高さも違うのに
同じに見えるのは
人でなく物に見えるのは
イメージに見えるのは
透明スクリーンの向こう側で演技していると思うのは
彼らは口で何かを語っているのに 何も伝わってこないのは 
シカトしているのは つまり

B 暴力じゃないのか

見えない誰かに操られ
踊っているようで 踊らされていて
見ているようで 見られていて
考えているようで 考えてなくて
楽しんでいるようで 楽しんでなくて
思っているようで 思っていなくて
笑っているようで 笑っていない
僕以外は全員 E・Tなのか それとも僕だけがそうなのか
みんな見えない本能に操られた巨大な脳の蟻なのか
みんなAIサイボーグなのか これは

O 大袈裟じゃないぞ

不安を覚えつつ 誰も周りで叫んでないから安堵して
誰にも尾行されていないのを確認して それでも心配だから
いつも通る乗り換え口を避けて いいか これはあくまでも
気分転換なのだと自分に言い訳をしながら
そんなことを思いながら

U 迂回してみる

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