小説紹介『蠅の王』
こんにちは、ぷりごろたです。
最近読んで印象に残った小説をご紹介します。
ネタバレはありませんので、ご安心ください。
紹介する本はこちら📚
タイトル:蠅の王
著者:ウィリアム・ゴールディング
訳者:黒原敏行
出版社:早川書房
物語は2人の少年の出会いから始まります。
イギリス出身の少年たちは世界大戦の時代に生きており、戦禍から逃れるために飛行機で疎開先へ向かっていました。
しかし、移動中に飛行機が炎上し、絶海の孤島に不時着してしまいます。
異常な状況に置かれた興奮もあったのでしょう、圧倒的な大自然、そして大人が全くいない孤島に彼らは希望を見出していました。
やがて2人は同じように孤島に不時着した子供たちと合流します。
年の頃は6才~12才、中には同じ学校に通っていた聖歌隊の集団もいるようです。
集まった少年たちは母国からの救助船を信じ、生き抜くためにチームを結成します。
彼らはチームをまとめる隊長を選び、ルールの策定、食糧・寝床の確保、のろし・焚火の管理など、必要な事柄を協力してこなしていきました。
まるで冒険者のような日々、そして何より大人がいない解放感を楽しみながら、困難をクリアしていくのです。
しかし、物騒なタイトルから想像される通り、ハッピーアドベンチャーとはいきません。
ある出来事を皮切りに少年たちは徐々に理性を失い、大岩が転げ落ちるように事態は暗転していきます。
不運な彼らにどんな運命が待っているのでしょうか?
そして、『蠅の王』とは何を指すのでしょうか?
と、いう内容の物語です。
文庫本で約350Pほどの長さですが、ページをめくる手が止まりませんでした。
ぜひ読んでみてください。
僕が面白いと思ったのは、登場人物が子供たちであることで、
「さて、これは子供だから起きてしまったことでしょうか?」
と問われているような気分になった点です。
理性を失うことでより苦しい状況に追い込まれていく場面が多々ありますが、はたしてその原因は子供たちが成熟していないがゆえか、それとも成熟したように見える大人にも眠っている何かがゆえか、相対的に考えさせられます。
ジョージ・オーウェルの『動物農場』でも、動物が主役であるからこそ、人間の本能的な部分がより直接的に描かれているように感じました。
『蠅の王』にもそれに似た面白さがあると思います。
また、著者ゴールディングが『蠅の王』について残した次のコメントが印象的です。
"大事なことはただひとつ、まずは物語のなかに入って、そこで動きまわるという体験をすることだ。そのあとで、自分の好きな解釈、正しいと思う解釈をすればいい"
物語への没入を念頭に置いているためか、風景描写がとても丁寧で、読み進めるとともに景色が頭の中でハッキリと組み上がっていきます。
この景色が用意されていたからこそ、心ゆくまで感じたり考えたりできたのだろうという実感は、ゴールディングのコメントと一致していて、彼の狙い通りに楽しませて頂きました。
やはりディストピア小説は面白いですね。
一度読み始めると、同じジャンルばかり続けてしまいます。
それでは、また👋
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