「脱水患者を受け持ちました。『とりあえず3号液』でいいですか?」 〜『とりあえず生食』の方がいいよ」〜
では、初期研修医でも受け持つ可能性のある患者さんで、「脱水」がある患者さんの輸液はどうしましょう?と聞かれたら、どうアドバイスするだろう?と考えてみました。いつも通り「ざっくり」いきましょう!
ポイントは2点にしました。
「脱『水』」 と 「脱『Na』」の違いを理解しよう!
脱「Na」は循環に影響し強い症状を起こすので、晶質液で素早く補正!
これらについて解説していきましょう!
脱「水」と脱「Na」って?
まず、なんでもかんでも「脱水」と呼ぶことがあまり良くないことは、「藤田芳郎」先生の名著(僕にとって研修医の頃の礎の書籍でした!)に書かれています(記事の最後にリンクを貼っています)。そこで、脱「Na」と脱「水」という言葉の使い分けを覚えましょう。
・脱「Na」というのは、ナトリウムと水がセットで喪失している状態
・脱「水」というのは、水だけが単独で喪失している状態
どういうことでしょうか?徐々に理解していきましょう!
採血でNaが正常、ということの意味
人体では、よほどの例外がない限り、ナトリウム(Na)と水が一緒に動くと教わったことがあるかもしれません。血液検査で[Na]値は多くの患者さんで正常値内ですよね。これは、「ナトリウム濃度」です。これが正常というのは、水とNaとのバランスが合っている、ということなのです。
だから、Naと水がセットで足りない病態を「脱『Na』」と呼び、水だけが足りない病態を「脱『水』」と呼ぶことが提唱されています。もちろん、臨床的には圧倒的に前者の「脱『Na』」が多いですよね。
脱「Na」は「前負荷」が不足している可能性がある
体液にもいろいろな区分がありましたよね。この中でもNaが足りないと細胞「外」の部分に「水」を維持できないことは習いましたよね?つまり今まで言われてきた「細胞外脱水」というのが、上述の「脱『Na』」なのです。
各体液の分画において、最も重要なところは、「血管内」であることはみなさん明確でしょうか(さらに突っ込むと、stressed volumeが大事です)?
ここの体液量は循環動態に関係するから大事なのです。この分画の体液が不足していると、低血圧や循環不全を起こし、「体調不良」「倦怠感」「立ちくらみ」などの症状が出てしまいます。つまり、症状があって病院や診療所を受診し、脱水と診断されるような人々は、ここの体液が不足している(「ここだけ」じゃないにせよ)可能性が高いわけです。理由はなんであれ、です。症状を良くしてあげるためにも、まずはここの体液から補正してあげましょう。
だから、「とりあえず3号液」より「とりあえず生食(もしくは「晶質液」です、ラクテックなどの「リンゲル液」ですね)」の方が最初は良いですよね?stressed volumeを増やして心拍出量を上げましょう。
救急外来や集中治療室・周術期に選ばれる輸液は?
救急外来でまず点滴をとって(静脈路を確保して)とりあえずつなぐのは何でしょう?生食のことが多いと思いですよね。同様に循環動態が破綻しているor破綻しやすい患者の多い集中治療室や周術期患者さんでは必然的に晶質液が使用されていることが多いです。
脱「水」は比較的レアな病態なので、最初はムシで良いです。
とりあえず、脱水症状がありそうな人にはまず晶質液を
「脱水患者を受け持ちました。『とりあえず3号液』でいいですか?」
の答えは
『とりあえず生食』の方がいいよ」
になります。他のポイントはまた別記事にしましょう。
※ 本文で登場した、僕にとっての礎となった名著のamazonリンクを貼っておきますので、ぜひ余裕のある方は本書で勉強してください(研修医の間にこれ一冊が6~8割習得できるだけでも、かなり「デキる研修医)になれると自信をもっていえます。
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