急性期のvolume control
急性期の輸液戦略の「難しさ」について、「ざっくり」話します。
急性期の輸液戦略は難しい
多くの場合、急性期患者さんは、相対的に血管内volumeが不足することによる循環不全を呈します。そのため輸液戦略が重要になりますが、これが難しい、「迷子」になりかねないんです。
循環管理が大事な理由は、「酸素」が絶えず必要だから
「循環管理」とは、組織の必要とする栄養や酸素を不足無く供給できるように、医療的に介入することです。栄養はともかくとして、特に酸素の供給が追いついていないと、即、生死に影響を与えます。
急性期の患者さんでは、「①酸素必要量が増えている」「②(酸素を運ぶための)心拍出量がなんらかの理由で低下している」ために、循環管理をしてあげる必要があります(酸素を取り込む呼吸器系の障害については別の記事で「呼吸管理」として書きたいと思います)。
①酸素必要量が増えている場合
ばい菌と戦うため、組織を修復するため、等。
これは基礎疾患の治療が一番大事なことは言うまでもありませんが、必要に応じ、「鎮静」「鎮痛」「解熱」などの介入をすることもあります。呼吸努力が強い場合に人工呼吸器につないで「呼吸補助」をしたり、場合により「筋弛緩」まですることもあります。
②心拍出量が低下している場合
こちらが輸液の主なターゲットになります。心拍出量(ここでは心拍数のことは無視して「一回拍出量」と考えます)を決める要因は
「前負荷」
「心収縮能」
「後負荷」
の3つです。
3つ目の後負荷は血圧を至適にコントロールすることに尽きます(ので、あまり触れません)。
2つめの「心収縮能」は主に心疾患により低下することが主なのですが、敗血症性ショックなどでも二次的に低下することがあります。その場合は、心機能をサポートしてあげる必要があります。強心薬を使いましょう(別の記事に書きます)。怖い不整脈が出ない範囲で。
そして、1つめの「前負荷」こそが循環管理で一番ナイーブなところです。難しいのです。「難しいのだ」ということを知ること、これが一番大切です。
前負荷のコントロールが難しいからこそ、それ以外のコントロール方法に精通していることは大事
循環管理では心拍出量のコントロールが大切。
そして、心拍出量のコントロールでもっとも難しいのが「前負荷」のコントロール。
前負荷のコントロールは難しい。だからこそ、後負荷・心収縮能などの管理や、酸素必要量を減らすような「前負荷以外」の管理にも長けていることが大事だ、ということ。をお伝えできていれば、この文章を書いた甲斐があるなあと感じます。
※ 細かいことは、おいておくとして、輸液による前負荷のコントロールの難しさは、「輸液が有害」な場面があるからです。また、いま輸液をするのは有効なのか?むしろ有害なのか?を判断することが難しいからです。