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虜になる循環の生理学④輸液と輸血

さて、循環の生理学の全体像が見えてきました。

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 ここで、

前負荷を維持するのにどのように輸液を選択すれば良いのか?

という議論があります。細かく述べませんが、改訂スターリングの法則(何それ?という人は無視してもらってもOKです)を踏まえると、晶質液(いわゆる乳酸リンゲル液など)で良いだろう、というのが結論です。

 膠質液(アルブミンやHESなど)を好む医師もいるのですが、急性期、特に炎症や侵襲期には、血管内に体液を維持する役目は期待できないと言われ実際にそれを示唆する臨床データが出ていることが説明されています。

 では、輸血はどうでしょう?輸血は、前負荷を増やす行為であり、かつ、ヘモグロビン(Hb)を増やすため「酸素運搬」を改善させます(上図)。循環を維持する上で非常に大事な行為です。では、Hbは高ければ高いほど良いのでしょうか?その答えも本書の「粘稠度viscosity」の項目で述べられています。
 実は、Hb濃度が高すぎると、それが粘稠度を高め、心負荷になることが言われています。逆に、急に出血などでHbが低下しても、粘稠度の低下により心負荷(いわゆる後負荷ですね)が低下し、心拍出量が増えるので代償されるわけです。純粋にHb濃度だけで酸素運搬への影響が語れないことが分かります。
 例えば、Hb14(g/dL)とHb7(g/dL)とでは、酸素運搬が倍近く違う気がしますが、前者の方が心拍出量が減ってしまうので、「貧血の影響は思ったほどではない」ということです。逆にいえば、「輸血による影響も思ったほどではない」ということです。
 つまり「Hb値のアップダウンから受ける『みためのインパクト』ほど、循環への影響は大きくない」と理解しておきましょう

 本書ではざっくり、Hbは7(g/dL)程度あれば良い、心疾患があればもう少し高めに、と言い切ってくれています。

 このあたりは生理学的につっこんだ話が盛りだくさんですので、詳しくは本書をご確認ください。逆に、そういう突っ込んだ話が苦手な人は、本記事の内容で十分です!


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