虜になる循環の生理学③「心拍出量」というキーファクター
復習
前回は、循環を語るのに
① 酸素運搬
② 組織灌流
の2つを意識できていれば良いことが述べられていると紹介しました。
そして、②=血圧(ざっくり)でした。
①については、集中治療室に入ればモニタリング(SvO2)できる。一般病棟では患者さんの慎重な観察(特に意識レベル、皮膚の冷感や網状皮斑の有無、尿量の3点)によっておおまかに循環がうまくいっているかをみる必要がありました。
それでは、今回述べる内容のまとめです。
今回の内容のまとめ
・循環の①、②のいずれにとっても大事なのは「心拍出量」である。
・心拍出量を決める前負荷は「容量負荷」
→補液すればするほど増えるが、入れすぎるな
・心拍出量を決める後負荷は「圧負荷」
→血圧は最低限必要だが、高すぎてもダメ
・循環の①、②のいずれにとっても大事なのは「心拍出量」である
名著の記載を紹介していきます。①にも②にもダイレクトに関与している因子は何でしょう?下図をみてください。色をつけてみました。
僕の記事によく出てきた、あの「心拍出量」です。
心拍出量を決めるのは、心拍数と一回拍出量でした。
一回拍出量を決める3因子はご存じでしょうか?前負荷と後負荷、そして心収縮能です。これだけだとピンとこない人もいらっしゃると思います。そこで、著者は以下のように割り切ることを提案してくれており、僕も大賛成です。
「前負荷」=「容量負荷」
「後負荷」=「圧負荷」
特に医学生は容量負荷・圧負荷という言葉を試験対策でよく使いますので、この方が分かりやすいと思います。
前負荷は(心臓にとっての)容量負荷であり、収縮前に「引き延ばされれば引き延ばされるほど、次の収縮が強くなる」というフランク・スターリングの法則が当てはまります。さらに僕なりにざっくり言えば、「補液をすればするほど1回拍出量は増える」となります。
後負荷は(心臓にとっての)圧負荷であり、収縮期血圧で代用しましょう。これについては僕も過去にさらっと述べていますが、「血圧は高すぎず、低すぎずにしましょう」ということが大事です。低すぎると②組織灌流が維持出来ませんが、高すぎると、心臓がへばってしまって心拍出量が減ってしまうのです(特に心機能の低下した心臓の場合に)。
心拍出量は最低限必要だが、むやみに高くする必要はない
さらに、静脈系の圧から循環を語る章が続きます。ここについては詳しく語ると嫌になる、という人が多いのでこれもざっくりいきましょう。
著者は、ここまで心拍出量の大事さを語ってきましたが、「循環さえ保たれていれば、むやみに心拍出量を増やそうとする必要はない」と言ってくれています。どういうことでしょう?
「前負荷を増やせば増やすほど、心拍出量は増える」のでした。
つまり、今の太字部分を言い換えるならば、「循環が保たれてさえいえば、むやみに前負荷を増やす必要はない」、ということになります。ときに過剰な前負荷は「静脈系」の圧を上昇させ、肺うっ血や体うっ血を起こしてしまいます。これについては別記事で述べましょう。具体的に前負荷を増やすにはどうしたら良いかは、次の2記事で取り上げます!
本書では、生理学的なバックグラウンドや、上記のようなざっくりにいたった学術的な背景についてきちんと述べてくれています。それでも読みやすく仕上がっている本書は名著中の名著だと思います。是非実際にみなさんも読んでみてください。