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新しい造語「ワインバリア」に対する「オーガニックワイン」という打開策

本稿はすべてのワイン消費者さんに向けて作成しました。
全文無料公開ですが「投げ銭」制も採用しています。


まとめ

・メルシャンが近頃発信する「ワインバリア」という造語
・「ワインバリア」打開策としての「オーガニックワイン」
・メルシャンの輸入オーガニックワインの定義はIFOAM準拠ワイン
・大手ならではの品質安定コスパオーガニックワインに期待膨らむ


こんばんは、じんわりです。

 先週国内ワイン製造販売大手のメルシャンが事業計画を発表した際に、面白い言葉を使っていましたね。以下、日本食糧新聞2020年1月20日付記事の一部引用です。


ワイン大手のメルシャンは若年層の開拓を急ぐ。15日発表の事業計画に、入門者がワインに対して取っつきにくいと感じる「ワインバリア」を低減する方針を掲げた。市場が伸び悩む中、20~30代の間口(購入率)減少が業界全体の課題とみて、新しい飲用シーンや付加価値品を提案する。


 なるほど、「ワインバリア」=ワイン飲用を妨げる障壁、ということですね。

 どうも昨年あたりからメルシャンはこの造語を発信し始めたようですね。以下、食品新聞2019年12月23日付記事の一部引用です。


昨年、今年は踊り場の感がある国内ワイン市場だが、中長期的には伸長が続くとの見方が大半だ。ただ、購入者の飲用は増えるものの、購入者自体は大きく広がらず、間口拡大が課題とされている。
間口が広がらない背景として「敷居の高さ」が指摘されている。ワインは難しいなどといった意識が気軽な飲用を妨げているとされ、「ワインバリア」とも言われる。


 ワインに興味はあるにもかかわらず、ワインビギナーの方がワインに何等か「敷居の高さ」を感じて取っつきにくくなる現象、ワインに対して彼女・彼らを取っつきにくくさせる要因を「ワインバリア」と表現するようですね。

 今まで「ワインビギナーの方に『ワインは敷居が高い』と思わせ続けていた有形無形の何か」を誰もがわかり易くイメージし易い「ワインバリア」というシンプルな造語にまとめてくるあたり、ワイン醸造だけでなくマーケティングも熟知する国内最大手、流石ですね。
 私自身もワイン業界に身を置くものとして、日本の一般的な消費者さんに纏わりつく「ワインバリア」を何らかの方法で破壊・融解して、消費者さんにもっとワインに近づいてほしい、楽しんでもらいたいという思いで幣ブログを始めた経緯があります。「ワインバリア」はとても共感できる問題提起ですね。

 もちろん、造語をつくってハイ終わり。ではなく、造語で問題提起をした後にメルシャンはその解決策を提案してくれています。提案のうちのひとつが「オーガニックワイン」のラインナップですね。今年から「わたしにイイこと、みんなにイイこと。」と題してをオーガニックワインの輸入販売及びマーケティング施策強化するようです。ついにキリン/メルシャンが「オーガニック」というカテゴリで本気を出し始めましたね。
 ワイン業界だけでなく多業界に渡り、いや世界中で今流行りの「オーガニック」「エシカル」「サステナブル」というキーワードに乗っかっていく姿勢を見せていますね。

 キリン/メルシャンが「オーガニックワイン」の領域を開拓してくれることに私は大歓迎です。なぜかというと彼らはぶどうとワインの科学を熟知しており、それ相応の品質を科学的に担保した上で「オーガニックワイン」領域に本格参入してくることが予想されるからです。それ相応の品質担保とは何か?「おいしさ」と「味の安定=いつ飲んでも(いい意味で)同じ味」ということですね。
 いわゆるビオ、オーガニック、自然派と称されるカテゴリのワインは、一般的なワインよりも当たりハズれの不確実性が強い傾向にあると言われますが、国内上場・業界大手の総合飲料食品企業が購入ロットごとに品質が安定しないワインや、品質が安定していても低位安定=微生物汚染の極まった「がっかりワイン」を売ることは市場が許してくれないでしょう。

 私のみならず同業の方々もブログ等のメディアで一般消費者さんに向けて発信されているように、そもそも「ビオ」とは、「自然派」とは、「オーガニック」とは何ぞや?定義が曖昧ではないかね?という問題提起に対して、メルシャンは「オーガニックワイン」プロジェクトの公式webサイト内で、以下のようにしっかり定義づけしてくれています。

「オーガニックワイン」とは
国際有機農業運動連盟(IFOAM)に則ったワインを指します。農薬や化学肥料を使⽤しない有機栽培のブドウを使⽤していること、認証機関の認証を得ていることなどが必要です。

 このあたりも手抜かり・歪みなく、安心感がありますね。私はIFOAMが初耳でして、今後機会があれば調べてみようと思います。はたして記事にできるでしょうか。

 彼らが取扱うワイナリーの面々をみても非常に期待が膨らみますね。消費者さんの目を引く各ワイナリーのストーリーもさることながら、幣ブログがワインビギナーの方にお勧めする¥2,000を下回るワインの取扱いも少なくありません。しかもオーガニックワインです。近々投稿予定だったた「自然派」や「ビオ」に関する記事で、「ワインビギナーの方には(オーガニックも含む)自然派ワインの類とは一旦距離を置いて頂き、品質の安定した¥2,000前後の大手のワインを先にお試し頂く」ようお勧めするところだったのですが、「安心安定の大手が輸入する¥2,000未満のオーガニックワインもありますよ」、という追記が必要ですね。

 取扱いワイナリーの中でコドーニュは私も好きな蔵ですね。安定の品質とコスパのスーパーカヴァ、というと言い過ぎでしょうか。
近々ドメーヌ・カズのワインも買って飲んでみようと思います。未体験のワインとの新しい出会いを想像すると心が躍りますね。この幸福感は価格の高低とは関係なさそうです。


  国内ワイン業界の雄が「オーガニック」領域を本気で攻めてくれるというのは、入手しやすく良質なコスパオーガニックワインが増えるため、一消費者として嬉しい限りです。また、曖昧だった「オーガニックワイン」の定義や品質基準を市場に据えてくれるという意味でも消費者さんに有益です。
 反面、一抹の寂しさも感じているのですね。そのまままで充分良質なワインに対して「オーガニック」という枕詞をつけないと「ワインバリア」を超えていけないのかもしれない、という現実に対してですね。
 今回メルシャンは消費者さんの「ナチュラル」「エシカル」ニーズに対して、自社の輸入ワインラインナップに「オーガニック」という記号を付与して、消費者ニーズに寄せていく選択をしました。もちろん中身が伴っていますし、それは至極まっとうなマーケティングだと思います。

 本稿の最後に私がワイン消費者さんに伝えたいのは「オーガニック」でなくてもいいんだよ、ということでしょうか。「オーガニック」という記号が独り歩きして、別の意味での「ワインバリア」にならないことを願いつつ・・・。


さんて!

じんわり

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