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自然派ワインって何かね?


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まとめ
・自然派ワインとは環境や消費者に優しそうな農法・醸造法でつくられたワイン(のようです)
・ハズしてもいい覚悟で選びましょう
・初心者の方はこなれてから手を出された方がいいかも・・・

こんばんは、じんわりです。


 近年「自然派ワイン」をウリにする小売り店さん、飲食店さんがずいぶん増えたように感じます。一般的な酒販店さんでも「自然派」の文字がPOPに踊るような状況で、流行を過ぎて今やひとつのワインカテゴリとして確立された感もありますね。

そもそも自然派とは何か?
 私は仕事として「自然派」ワインに深く関わったことがなく、消費者として「自然派」を理由にワインを選んだこともなく、「自然派」というカテゴリがいつごろからどのように形成されていったかを知りません。Jamie Goode著・伊藤伸子訳の「ワインの味の科学」によると、ロバート・パーカーの登場以降に自然派という概念(?)が興ってきたようにも読み取れます。自然派の興りにお詳しいベテランさんがもし本稿をお読みになられましたら、是非ご助言を頂きたいところです。

 自然派ワインの定義ついても、どこまでが自然派でどこからは自然派でないのかもよくわからないのですね。今のところ「公(法的に)に認められる線引き、定義はない」と理解しています。ボルドー大学の偉い先生もそんな話をされているそうなので、おそらく間違いないでしょう。

(2020年3月26日追記:”Vin méthode-nature”なるカテゴリが法的に認められたとのニュースを確認しました。当該カテゴリ法制化を主導した団体のfacebookアカウントです→https://www.facebook.com/SyndicatVinNature/)

 しかし消費市場では以下のいずれかを満たすワインは概ね「自然派」ワインと呼ばれるように感じます。

・ぶどう栽培において、減農薬、有機認証、ビオディナミ等の環境や飲み手に優しそうな方法を採用している

・ワイン醸造において、培養酵母等の副原料を使わない
(亜硫酸は少し使ってもお目こぼしがある)

 所謂「オーガニック」や「ビオ」と呼ばれるワインたちも、大括りで捉えれば「自然派」と類似のジャンルとして消費者側に認識されているように思います。

 アメリカではベビーブーマーの子供たち=ミレニアル世代と呼ばれる大消費者層が旧来の加工食品を離れ「オーガニック」なイメージの食品を求める傾向にあるだとか、ワイン以外のシーンでも世界各国で「エシカル」や「サステナビリティ」という言葉が頻出するご時世で、「自然派」という謳いはトレンドに敏感な一般消費者さんのハートをがっちり掴んでいるように思えますね。

 肝心なワインの中身ですが、私が経験してきた限り、所謂自然派と自他称されるワインは自然派と称されないワインに比べると、がっかり発生率(=不快味不快臭を感じる割合)が高くなる印象を持ちます。

 また、自然派とされるワインは幣ブログがワインビギナーの方にお勧めする¥2,000よりも高価である場合も多く、がっかりワインだったときの精神的ダメージが大きくなりがちです。


「Natural(自然)」と「Wild(野生≒放置)」の混同

 口にするものはできるだけ自然な方がいい、それは消費者さんの切なる願いでしょうし、ワインに限らず世界中の食品業界における最近のホットテーマのように感じます。

 しかし我々は「自然」なことと「放置する」ことを混同してしまいがちです。
 農薬散布を過度に嫌がった結果、病果は増えるでしょう。培養酵母を使わないうえに亜硫酸を使わないという放置プレイを敢行すると、変敗菌によるワイン汚染が横行しがちです。これらの結果としてがっかりワインが誕生することは必定と言えるでしょう。加えて、変敗菌によるワイン汚染は頭痛原因物質の増加に繋がる可能性があります。踏んだり蹴ったりですね。

 このように大昔さながらに造ることを「自然」と考えてそれにこだわり過ぎると、栽培・醸造の難度が格段に上がる=不快な香味のないおいしいワインを造ることがより難しくなる、ということですね。

 その昔、とあるMW(マスターオブワイン)の方と仕事をする機会に恵まれました。醸造家でもあったその方に「”自然”発酵のワインはどう思うか?」という質問を投げかけた人がいました。

 氏は答えて曰く

「まず、Natural(自然)についての定義を確認しよう。Natural(自然)とWild(野生)は全く違うもの。ヒトが適切に手助けして本来ぶどうとワインが持つ”らしさ”を表現出来ている状態がNatural。ぶどうとワインをあるがままに放置している状態がwild。発酵を野生=Wildに任せるということは本来ぶどうとワインが持っている“らしさ”を覆い隠してしまう。畑ではぶどうの枝・葉・房を丁寧に管理して病気の予防を怠らないように、発酵中の微生物管理も怠るべきではないよね?」


 「Natural」と「Wild」の違い。・・・なるほど、語録級のコメントですね。

 日本では市販酵母を使わず発酵工程を行うことを「自然発酵」と認識して呼称することが圧倒的に多いように感じますが、英語圏でワインを造る側の人々はその概念を「Wild Fermentation=野生発酵」と表現することが一般的と感じます。「Spontaneous Fermentation=自然発酵」という表現もなくはないですが、Natural Fermentationという表現はあまり耳目にしませんね。市販酵母を使わない方法は海外では一般的にwildと捉えられているのでしょうね。
 
 私が飲んだ自他称自然派ワインの中には「これホントに野生発酵なの?」と思うくらいきれいでおいしい仕上がりのワインも確かにありました。それらがどのように造られたかの事実を確認する術はありませんが、いい意味で100%自然(野生任せ)な造りはなされていないのかもしれません。ワインも一種の加工食品である以上、人間による介入はある程度必要でしょうね。

結論:
ハズしてもいい覚悟で自然派にトライ

 自然派ワインが気になるワインビギナーの方への提言ですが、値が張りがちな自然派ワインではなく、まずは¥2,000程のコスパ良好ワインでご自身の嗜好を確立し、もう少し上の価格帯に突入してこなれ、ようやく次の段階で自然派ワインにチャレンジしてみる、という段階を踏んでみてはどうでしょうか。自然派というものはそれだけ難易度・くじ引き度が高いように感じるのですね。
 ¥2,000以内で買える自然派ワインも探せば見つけられると思いますので、一度安い自然派ワインをお試ししてみる、というのも良い確認方法かもしれません。

関連稿:  大手企業が打ち出す安定のオーガニックワイン、しかも¥2,000以下という親しみ易さ。ワインビギナーの方に優しい選択肢ですね。

自然派と類似する概念としてビオと呼ばれるジャンルもありますね。

さんて!

じんわり

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