詩 憂いという名のそれを知らない
どうしても、
思い出せないことがあるのです
たしかにあったその輪郭を
私はもう准ることができない
碧く、煌らかな光が
大きな樹の傍で風のように
詠って 靡いていた
そんな夢を見ました
私の隣でそれを見つめていた、
貴方の頰は透きとおっていて
その景色に、
何だか涙が零れたことを
ただ
憶えていようと思いました
日々の寒さに息を吐きながら
ふと
何処かに、貴方の瞳を感じます
それは、
遠い 微かな想い出のようで
古く 懐かしい痛みのようで
記憶の扉が、軋んでひらく
幻が ひらりと 移ろいで笑う
空想を夢みて 足を縺れさせる
それでも私は
きっと此処から出られなくて
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貴方の名前を知らない
私は
また いつかの詩を書いている
この 虚ろに煙る世界の淵で
未だ 瞬く
その夢幻を求めている
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