小説・「塔とパイン」 #13
ドイツの旧市街は、古い建物と舗装された道路が特徴的で、中世の雰囲気を感じさせる。狭い路地や広場には、カフェやレストラン、ショップが軒を連ね、地元の人々や観光客でにぎわっている。
喧騒の中で建物の外壁には、花や植物が飾られ、美しい彫刻や装飾も見ることができる。教会や城跡など、歴史的な建造物も多く、その風景はまるで絵画のよう。特に、夜になると、建物や広場はライトアップされ、ロマンチックな雰囲気に包まれる。
旧市街は、歴史的な建物や文化遺産を守り続け、伝統を大切にしているため、訪れる人々に貴重な体験を提供してくれる。
昼下がり、ケバブを食べるのは、旧市街にあるいつものベンチ。木製のベンチは、独特な雰囲気を醸し出している。木の温かみが感じられ、古き良き時代の趣が漂っている。天使のような悪魔のような彫刻や装飾が施された美しいデザインが目を引く。
ケバプに食らいついていると、一人の女性が話しかけてきた。
「すみません、道が分からなくて困っているのですが、この辺りでヴェルナー通りはどこにありますか?」
「ああ、そうですね。ヴェルナー通りですね。確かにここからは少し遠いですが、地図で確認すれば分かると思います。」
「えぇと・・・地図を持っていなくて、道に迷ってしまったのです。」
「そうですか、ではちょっとこちらに。」
「こちら街の案内板です。ヴェルナー通りまでの行き方が載っていますので、これで道に迷う心配はありませんよ。」
「ああ、ありがとう。あなたはこの辺りの住民なの?」
「いいえ、ここに仕事で来てるんです。いつも、この辺りのベンチで休憩しいるんです。」
「そうなのね。親切にしてくれて、ありがとう。わたし、旅行者なので、現地の方に親切にしてもらうと嬉しいわ。」
「どういたしまして。道中気をつけて行ってくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
急に食事が中断されたから、最初は、ちょっとイライラしたり、不快な気持ちになったけれど、相手が誰であっても、礼儀正しく対応することが重要だと思っているから、邪険に扱うことはしない。
困っているときはお互い様だ。相手が緊急を要する状況に陥っている場合は、手助けすることも大切。
「いいことしたな」
自己満足だけれど、それでいい。
半分ほど残った冷めたケバブを流し込んで、ベンチを後にした。