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小説・「塔とパイン」 #26

製菓学校での日々はとても新鮮で、しかし厳しくもあり。とても充実していた。僕は実家が製菓店でもあったから、多少の知識はあったつもりだった。いや、本当にあると思ってた。


・・・あれ、違う。


自分が今まで知っていたこと、親の手伝いをしていたこともあったから、よくわかっている。どこか自信めいたところがあったんだと思う。父親が積極的に教えてくれたわけでもない。それなのに「自分はできる、できている」と思い込んでいた。


学校に入って数週間、徐々に違和感が大きくなっていくのを実感してた。


RPGが好きで、近所の子供たちや同級生と同じようにテレビゲームに没頭する日々をおくってきたから、経験値が大事だということはわかっている。だけど、経験値を貯めても、レベルが上がるかどうかはその人次第。


レベルが上がってもすぐに必要なスキルが身につくわけでもない。それはわかっていたはずだった。僕も実家での経験があるから、簡単&余裕だろう?って思っていたが、勝手が違った。


カリキュラムは体系立ててあり、実習もあるが座学もある。経験といういみでは実習に一日の長があると思っていたが、しょせんはお手伝いレベル。周りを見てみると・・・。

進学して3か月経ったころがもしかしたら一番つらかった時期だったかもしれない。慣れない学校の授業とアルバイト(当然、飲食店を選んだ)で疲労困憊していた。


長雨の中、泣きそうになりながら夏を迎えようとしていたある日。

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