開脚は60度しか開かないけど
寝る前、ベッドの上でこっそりストレッチをしている。
こっそり、とつけてしまうのは、こう、なんというか大きな声でいえるような大々的なストレッチではないからだ。
大々的なストレッチが何かというと、ヨガマットを引いて本格的に筋肉を伸びたり縮めたりするだとか、例えばこういうイボイボのいかにもストレッチに聞きそうな小道具を使ったりだとか、そういうストレッチのことだと思ってほしい。
でも、私が寝る前にしているストレッチはとてもこっそりしている。
なるべく痛くなく、無理せず、とりあえず自分の感覚で「伸びてるなー」がわかれば3秒ぐらい静止して、ふっと息を吐いて、はい終わり。左側だけだと、バランス的になんだか気持ち悪いからとりあえず右側も。「伸びてるなー」を感じて、3秒静止、ふっと息を吐いて、もう終わり。
そんなこっそりストレッチをかれこれ半年ぐらい続けている。
夏から、月に1回だけ友達と代々木公園でパークヨガをしている。ヨガインストラクターの先生がいる本格的なパークヨガ。ヨガで最も重要だといわれている呼吸法から始まり、戦士のポーズや、チャイルドポーズといった様々なポーズを約2時間ぐらい。
先月、パークヨガで開脚をする瞬間がやってきた。
私の身体は生まれたときからがっちがちの鋼で、開脚なんぞ90度も開かない。ジーンズも履いていないのに、なぜか開かない。悔しい。
案の定、パークヨガでも全然開かなくて、見ていたインストラクターの先生からは「無入りせずでいいですからね~」と言われた。無理せず、をしていたら60度ぐらいしか開かなかった。悲しい。
その悔しかったり、悲しかった気持ちを、こっそりストレッチをしているときに時々思い出しては、「全然開かなかったな~」と思う。
パークヨガが終わった数日間は、開けるようになりたい! と思ってこっそり開脚もしてみたけど、結局「無理せず無理せず」を合言葉に、今ではとりあえず60度だけ開いて、3秒止まって、ふっと元に戻す。きっとこれからも開けるようにはならないだろうな、となんとなく思っている。
それでも、こっそりストレッチを続けているのは60度をキープするためだ。もしこれが40度になってしまったら私は落ち込むような気がする。いや、確実に落ち込む。だからとりあえず、60度だけでもこっそり開けるままでありたいのだ。