バスが身近にない人生だった
買い物をしようと駅に向かった途中で、ふと「今日はバスで行ってみるか」と思ったのは、いい思いつきだった。
いつも使う電車は、知らぬ間にマンネリ化している。
家の最寄り駅から大きな駅に出るまでに通る駅順もなんとなくわかるし、友達と会うときも乗り換えしやすい路線が通っている駅になってしまう。つまり、使う駅は定番化しているのだ。
だから今日、バスに乗って普段は全然使わない駅に買い物に行った。
バスの時刻表を見ると、次のバスは10分後に来るらしい。ところで、どうしてバスターミナルはこうもアナログなんだろう? すべてをデジタルにはできなくても、駅のホームみたいに次のバスの到着時刻が表示された電子盤があってもいいんじゃないかと思ったりした。それから、今バスがどこを走っているかもリアルタイムで見れるようにしても良いのに、と思っていた。
10分経って、バスがやってきた。私はバスの乗車経験が幼稚園児レベルだ。なかなか乗る機会がないから、料金を払うタイミングにいつもどきどきする。
今回は、乗るときにピピっとして、降りるときに料金を払うためにもう一度ピピっとするタイプだった。
先月行った金沢は、バス料金が一律だったから乗ったときにピピっとするだけで支払いが済み、降りるときは何もしなくていいタイプだった。
まだSuicaがカードだったとき、降りるときにチャージ料金が足りないことに気づいてバス内でチャージしてから支払うという愚行をおかし、降りる人たちを待たせてしまったことを思い出す。さらに、現金のみ対応のバスで、料金の支払いはお釣りが出ないようピッタリで支払わなければならないことを知らなくて、降りる人たちを待たせてしまったことも思い出した。
バスが身近でない人生を歩んできてしまった。
バスに乗り込んで、一番後ろの窓側に座る。この席は、世界の末端のような感じがする。
「~~~~」運転手さんがアナウンスするけれど、言葉と言葉が繋がって何を言っているのか聞き取れなかった。でも、「右に曲がります」「止まります」「左に曲がります」だけは、しっかりと聞き取れた。
バスは、大きな揺り籠のようだった。微かにずっと、ブブブブブブブブ……と振動していて、その振動が心地よかった。全然覚えてないけど、自分がお母さんのお腹にいたときは、こんな振動を感じていたんじゃないのかな。
「~~~~」終点についたらしく、滑らかにバスが停車した。
”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。