
退職したら何をする? その3 スポットワーク
NHK「クローズアップ現代」(2/18)を観ました。
“スキマで稼ぐ”が急拡大 働き方はどう変わる?
バスや電車の時刻表、定期券、本・辞典、新聞、手紙・・・カメラ、映画館、銀行も、英会話教室・翻訳も、なんでもスマホの中に吸い込まれています。
《労働市場》や《労働組合》がスマホに入っても、驚きません。
タイミー、シェアフル、LINEスキマニ、メルカリ ハロ、ワクラク、ショットワークス、マイナビバイト・・・
履歴書も面接も不要、スマホひとつで始められるスポットワークが急拡大。
番組はその魅力を紹介します。
・・・アプリから申し込むだけという「手軽さ」が魅力となり、利用者は5年で6倍に増え、のべ2千万人を超える。一方で、新たな働き方にトラブルも。「求人内容と実際の仕事が違った」「仕事が直前にキャンセルされた」などの声が相次いでいる。働く現場の急速なデジタル化が、私たちの働き方をどう変えるのか?
学生だけでなく、主婦(子育て)や高齢者(年金生活)も、家計を支える追加の収入源を求めています。
退職したらスポットワークのマッチングアプリが(神の)「見えざる手」を差し伸べてくれるでしょうか?
・・・旅館業は季節や時期(時間帯)によって仕事の量・中身が大きく変動する。
・・・介護に従事する労働者はなかなか給与が上がらない。
こうして追加的なスポットワークの需要者と供給者はアプリに登録し、出会います。
早い。柔軟。多様。簡単。明解。
始業時間と終業時間をQRコードで報告し、給与はすぐに口座に振り込まれます。
雇用者は、まず、スポットワークで雇ってみて、その人を高く評価した場合、もっと良い条件で、しかも、長期に安定した契約をオファーするかもしれません。
高齢者は、週に5日も、9時―5時で働く体力・気力がないかもしれない。しかし、6時ー9時、あるいは、15時ー19時なら、働きたい。その職場が働きやすいとわかれば、さらに、少し余分に働くでしょう。
まずスポットワーク。そして、週3日のシフト制、長期の契約へ。
双方が評価やコメントを残すことも、SNS時代特有の声を上げる《市場》です。
アプリには、働き手による職場の評価・コメントが残る機能もあります。
雇用主の不当な扱いや要求、嫌がらせは、危険・劣悪な環境とともに、応募者から強く嫌われるでしょう。
それは、雇う側の《改善》が求められる明白なシグナルです。
他方、個々の労働者は立場が弱い。生活のために労働力を売らなければならない。この先もスポットワークを続けるには、職場での評価を気にする圧力が生じます。
スポットワークを悪用する雇用者に対峙する、集団的な交渉力・長期的な監視が必要です。
アプリによって、地域や職場でスポットワークの《労働組合》を結成する必要があります。
トラブルも起きます。
仕事の内容が違う。給与が違う。・・・詐欺。闇バイトに利用される。
すでに自治体が関与する試みが始まっています。
新潟県長岡市の「ながおかマッチボックス」。
正直で公正な《労働市場》の設計は、地域経済を維持する上で欠かせないインフラかもしれません。
しかし、ますます多くの人がスポットワークだけで生活するのは、よいことなのか?
ほんとうは長期的な、安定した職場を求めているのではないでしょうか? それが無いから、スポットワーク市場に入って、残念ながら、そこにとどまってしまう。
不安定な、臨時・つぎはぎ労働者の世界に「閉じ込め」られる。
スポットワークを繰り返してもキャリアは築けない。組織の集団的な知識や情報のネットワークから切り離される。
経験を積み重ね、高度なスキルを磨く展望・感覚を失う。
スポットワークに頼る中で、組織そのものも中核になる労働者を失って弱体化するのではないか。
労災認定によっても給与のすべてが補償対象にならない、という事例を紹介していました。
保険や年金はどうなるのか? さまざまな手当てやボーナスの差は何を意味するのか?
企業組織、法律や制度が、現実の変化に適応していないと思います。
アメリカの巨大企業や農場。二重労働市場。内部労働市場。アウトソーシング。自動車で暮らす季節労働者。移民、外国人労働者。
派遣・委託業者、ギグワーク、デジタル化、非正規労働、格差について考えます。わたしたちの《労働市場改革》を。
高齢者に働く機会を拡大し、若者や主婦・主夫、外国人も、労働市場に積極的に参加する。社会の統合化が促進されるような、新しい機会のネットワークが広がります。
市場による統合化。市場の制度化。公的な規制による介入、人間化が問われます。
健康に働けることが、仲間を得る、楽しみになる。そういうアプリをインストールしたいです。