【秋ピリカ】わたしを束ねないでください。
ちいさな紙の束をたばねる。
ちいさな会社のちいさな資料だ。
失くしてしまったとして誰も困らないような
そんなささやかな紙の束だ。
はじっこを出来るだけあわせて、ばらばらにならないようにカキンとやる。
紙がすこし分厚い時。
あの指にかかる微かなステープラーの圧力の中には、みえないぐらいの罪悪感が潜んでいる気がする。
紙を束ねているのにいつからかじぶんを束ねているように思ってしまう。
紙谷栞は、名の如くもはや紙なのだ。
名も知れぬ紙だから平気で誰かに束ねられてしまう。
佐伯