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魔法のフレーズ

ーオレとアチキの西方漫遊記(40)

"神の思し召し"は魔法のフレーズだ。自分の意思ではどうにもならない事態に遭遇しても、この呪文を思い浮かべさえすれば、無力感に苛まれず、すっぱりと気持ちを切り替えられる。神の存在を信じていようがいまいが関係なく使え、実に使い勝手が良い。奥さんの快気祝いを兼ねた今回の旅行。いよいよ大詰めを迎える中、立ち寄った京都での時間を満喫するのに、この言葉が果たした役割はきわめて大きい。

前回のお話:「期せずして聖地巡礼」/これまでのお話:「INDEX

降り出した雨

夕方に京都を発ち、義父の別宅がある静岡に寄って帰京するのみ。京都で残されたわずかな時間を楽しもうと嵯峨野巡りに繰り出したわが夫婦。ただ降ったり止んだりのあいにくの空模様。気分がなかなか振り切らない。

トロッコ亀岡駅

嵯峨野トロッコ列車に乗り、トロッコ嵯峨駅(京都市右京区)からトロッコ亀岡駅(同亀岡市)に向かう途中、ついに雨が降り出した。電車を降りるころには、傘なしでは”濡れねずみ”になるほどに。

「とうとう降り出したね」ー。奥さんは空を見上げていう。前日から降っていた雨は幸い朝方に止み、午前は何とか持ち堪えていたのに残念だ。傘を差しながら動くのは実に煩わしい。ため息が出そうになる。

ただ、これは"神の思し召し"だろう。そう思えば、いろいろ見えてくる。復路に保津川下りを使うプラン(※)を選ばずに正解だったなど。どうせ濡れるのであれば、晴れた日の川下りの飛沫が良い。雨とのミックスは御免だ。

順番待ちの列

小雨が降る中、歩いてトロッコ亀岡駅からJR馬堀駅へ。その後、JR嵯峨野線であっという間にトロッコ嵯峨駅最寄りのJR嵯峨嵐山駅(京都市右京区)に着く。改札を抜けると、再び雨が上がっていた。このプランが正解だったとあらためて確信。いよいよ奥さんお待ちかねの京料理ランチ(※)だ。

嵯峨とうふ「稲」

渡月橋(京都市右京区)まで真っ直ぐにつながる京都・嵐山のメーンストリートに出ると、午前中に通ったときに比べて観光客が多い。レストラン、食堂を物色してまわる。ランチタイムをとうに過ぎた時間だが、目ぼしい店は順番待ちの列。奥さんから漏れるため息。

これも"神の思し召し"、折角だから先に天龍寺(同)に寄ってから、あらためて(店の様子を)覗きに行こうー。こう奥さんを誘う。幸い、天龍寺は目と鼻の先にある。世界文化遺産に選ばれた寺社仏閣を時間潰しの対象にしたことには幾らかためらいもあるが、このままでは埒が明かない。

大きな功績

天龍寺002

中学の修学旅行以来だ(※)」ー。天龍寺に着くと、急に表情を輝かせる奥さん。それほど長い時間ではなかったものの、歴史を偲ばせる建築、手入れの行き届いた趣ある庭園を堪能した。それだけでない。この時間のおかげで、客が減り、見晴らしの良い席で京料理ランチを楽しむことになる。

魔法のフレーズがもたらした功は大きい。(続く)

(写真〈上から順に〉:蓮で知られる天龍寺・放生池。花が咲く時期は終わっていた=りす、嵯峨野トロッコ列車の下り線終点であるトロッコ亀岡駅=りす、観光客らでにぎわう京都・嵐山のメーンストリート=同、外国人訪日客も多く訪れる世界文化遺産・天龍寺=同)

関連リンク(前回の話):

「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:


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りす=ハードボイルド
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