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"ちょっぴりホラー"

ーオレとアチキの西方漫遊記(30)

月の名所として知られる高知県高知市の桂浜。この浜の近くにある民宿に一泊した。この宿で思い出すのは、盛り沢山のディナーと鰹のタタキ5人前についてだけではない。案内された部屋の窓から眺めた夕焼けの美しさ。そして、もう一つ。誰かに覗かれている気配を感じた"ちょっぴりホラー"な記憶だ。

前回のお話:「知られざる事情」/これまでのお話:「INDEX

真っ赤な夕暮れ

この民宿は二階建ての古い一軒家をリフォームして宿にしたようだ。わが夫婦は奥さんたっての希望により、2階にある和室に泊まった。窓から海が一望できる真新しい8畳間。奥さんも十分に満足したらしい。

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夕食を待つ間、窓から外を眺めた。真っ赤に染まる夕暮れ。そこに浮かんだ浦戸大橋のシルエット。そのコントラストがとても美しい。絵葉書の写真にでも使えそうだ。そのとき、無意識に口をついた言葉は:

「血のように赤いな」

あまりに気障ったらしい台詞に、ハッと我に返ったことでよく覚えている。そっと奥さんの方に目をやると、夢中でスマートフォンで写真を撮っており、どうやら気付かれなかったようだ。ホッと胸をなで下ろす。

不可解な感覚

やがて奥さんの"撮影会"も終わり、部屋のちゃぶ台で揃ってお茶を飲む。ところが、どうにも落ち着かない。どこか視線を感じる。カーテンを開け放してはいるが、数m先に防波堤こそあれ、覗き込める位置に人影はない。

「そろそろ窓とカーテンを閉めないか」と奥さんの方を向く。奥さんには見られている感覚はないようだ。いつも誰かに見られている気がする 「注察妄想」というヤツだろうか。本当のところは依然として闇の中だ。

後日談になるが、インターネットでたまたま見つけた高知県の心霊スポットを紹介するページである事実を知る。浦戸大橋はその筋ではそこそこ知られた場所らしい。怪しげな噂や目撃情報もある。

全国心霊マップ003

浦戸大橋は延長1480m。利用開始は1972年。橋からの投身自殺が相次いだため、橋の欄干に高さ約3メートルある背の高い返し付きのフェンスを設置したそうだ。それを知って少し背筋が寒くなる:

夫婦揃って霊感ゼロのはずだ。気のせいであってもらいたい。(続く)

(写真〈上から順に〉:夕暮れの浦戸大橋。この後、空が夕日で真っ赤に染まる=奥さん、部屋から一望できる海の眺め=奥さん、背の高い返し付きのフェンスがある浦戸大橋=フリー素材などを基にりす作成)

関連リンク(前回の話):

「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:


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りす=ハードボイルド
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