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"アゲハの季節"

2020年、春。新型コロナウイルスに世界中が怯える中、今年も"アゲハの季節"がやって来た。ベランダにあるグレープフルーツの植木、その葉に隠れるようにアゲハチョウの幼虫が2匹。奥さんが目ざとく見つけた。きっとナミアゲハに違いない。例年、ツツジが咲く頃を過ぎると、よく幼虫を見かけるようになる。暖かくなるにつれ、その機会はもっと増えるだろう。

東京アウシュビッツ

幼虫を取り巻く環境は厳しい。鳥をはじめ、蜂、蝿など、天敵がたくさんいる。その中で、一体何匹の幼虫がチョウになり、ベランダから青空に向かって舞っていけるだろうか。わずか1cmほどの幼虫を見て、将来を憂う。

知る限り、これまで幼虫生存率はゼロ%。さらに、奥さんは手厚い庇護を許さない。「自然界は弱肉強食が掟」とか。アゲハの幼虫にとって、このベランダはいったん入り込むと、二度と生きて出られない地獄の収容所。

名付けて「東京アウシュビッツ」。今年こそ、多くの"脱走"に期待したい。

(写真〈トップ画像〉:目ざとくチョウの幼虫を見つける=りす作成)

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