見出し画像

ほろ苦ブックカフェ

ー狭すぎた初体験

ブックカフェという言葉をよく聞くようになった。書店に併設している喫茶店をそう呼ぶらしい。ただ、これまで意識せずに利用した可能性はあっても、ブックカフェと事前に知って訪れたことはない。奧さんと買い物に行った先日、一息つくために寄った東京都豊島区にある大型書店内の喫茶店。これがブックカフェの初体験とも言える。そして、その感想は甘いどころか、ほろ苦い。

不満たらたら

初めてのブックカフェはあいにくの満席。しばらく待って通された座席にギョッとする。本棚が並ぶ売り場の一角に小さな細長い空間、そこに3組の小さなイスとテーブルがある。まるで狭っ苦しいコーヒースタンドだ。一息つくのにここで良いのかと奧さんに目配せするも、一向に気付かない。

仕方なく、そのうちのひと組に腰掛ける。向かい合って座る奧さんの顔が近くて受ける。隣との距離もかなり近い。女性を口説く男性の歯の浮く台詞が丸聞こえで恥ずかしい。奥にあるカウンターで注文して受け取るアイスコーヒーは1杯税込み400円と、よく行く大手チェーン店に比べて120円高い。

と、まあ、不満たらたらで、このときは店を後にした。ただ後日、とあるサイトで衝撃の事実を知る。奥にあったカウンターの左方に別のスペースがあって、こちらが本来のカフェスペースだったようだ。背の高い本棚がちょうど衝立ついたてになり、座席からはよく見えていなかった。

後の祭り

画像にあるその空間は、大学にある小洒落こじゃれたカフェテラスを彷彿ほうふつさせる。イス、テーブルは質素ながらも、壁側が全面ガラス張りで明るい。空中庭園が眺められるようになっていて開放感がある。つまり、われわれ夫婦が案内された座席は、満席のためにやむなく通されたスペースだったというわけだ。初めからこちらに座っていれば、感想も大分違っていただろう。巡り合わせの悪さを悔やむも、もはや後の祭り。宝くじに当たったのに、受け取りを忘れてしまったような気分だ。

かくしてブックカフェ初体験はほろ苦い思い出として刻まれる。合掌。

(写真:『りすの独り言』トップ画像=りす撮影の素材を基にりす作成)

いいなと思ったら応援しよう!

りす=ハードボイルド
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!