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丸ごとカボチャの記憶

ーオレとアチキの西方漫遊記(44)

滋賀県甲賀市の思い出ー。信楽焼のたぬき、NHKとの因縁(※)に加え、もう一つは、奥さんが道の駅で購入した30cmを優に超える大きなカボチャだ。しかも、丸ごと一個。両腕で抱えてもズシリと思い。わざわざ甲賀市まで来て、カボチャを丸ごと一個、迷いなく買う奥さんのチョイスが、どうにも腑に落ちなかった。そのせいで、この件は深く記憶に刻まれている。カボチャは個人的に最も苦手な食材の一つだ。

前回のお話:「薄い記憶と濃い記憶」/これまでのお話:「INDEX

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渦巻く疑問

今回の旅行も、残すところ、静岡県伊東市にある義父の別宅に寄り、東京に戻るだけだ。カボチャをわざわざ買った理由が分からず、それを尋ねると、奥さんは切って捨てるように一言:「急に食べたくなったから」

確かに、食べたくなる気持ちに理由はないだろう。納得するまで根掘り葉掘り聞くのも無粋だ。だから、それ以上は尋ねなかった。ただ、しばらくの間、頭の中には「どうして今カボチャ!?」という疑問が渦巻いていた。

認識の違い

やがて口が滑らかになった奥さん。スーパーでカットしたカボチャを買うよりも、この道の駅で丸ごと買ったほうが新鮮で割安だったなど、購入の合理的な理由を説明してくれた。義父の別宅で食材に使う予定らしい。

話を聞くうちに、道の駅への認識が夫婦で違うことに気付く。休憩したりお土産を買ったりする場所と捉えていたが、奥さんはスーパーの一つと考えている。なるほど、これでは奥さんの買い物が腑に落ちないはずだ。

旅行中も"お得感"を意識してくれていたことは嬉しい。細やかながら感謝の意を込め、義父の別宅に向かう道中、クルマの助手席で爆睡しても起こさないようにした。後部座席の足元に動かないよう固定したカボチャが見えた。

得意ではないカボチャ料理を食べる覚悟を決めた。(続く)

(写真〈上から順に〉:カボチャは最も苦手な食材の一つ。ただ食べられないわけではない=フリー素材を基にりす作成、立ち寄った道の駅にあった記念撮影用のパネル=りす撮影)

関連リンク(前回の話):

「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:


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りす=ハードボイルド
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