景色で腹は膨れない
ーオレとアチキの西方漫遊記(38)
今回の旅行。京都の最終日。トロッコ嵯峨駅(京都市右京区)の近くにあるレトロモダンな佇まいの喫茶店に入る。意外にも、頭を悩ましていた京都・嵯峨野巡りのルートはあっさり決まった。保津川下りは見送りに。決定打は「京料理ランチは譲れない」という奥さんの一言。確かに、どんな風光明媚な景色でも腹は膨れない。机の上に置かれた期間限定のケーキに喜色満面の奥さん。言いたいことはあったが、良かったねとうなづくにとどめる。
前回のお話:「同等の代価と難しい見極め」/これまでのお話:「INDEX」
純喫茶な雰囲気
「いらっしゃい」ー。正装のマスターがカウンター越しに声をかけてくれた。純喫茶を思い浮かばせる店内。暖色系の照明、落ち着いた雰囲気に、地元の常連客がちらほら。実に居心地が良さそうだ。単品のアイスコーヒに続き、奥さんがホットコーヒーとイチジクのケーキのセットを注文。
行きはトロッコ電車に乗り、帰りのコースが決まっていなかった。夕方までに京都を出発する制約がある中、費用と時間がかかる保津川下りを利用するか、それとも費用と時間は問題ないが、嵯峨野を満喫するには、やや物足りないJR嵯峨野線を使うか。ともに一長一短ある。
「ランチに京料理を食べるんじゃないの?」ー。奥さんがあらためて問い直す。京都では京料理を食べようと話し合った記憶(※)が蘇る。帰りはJR嵯峨野線を使うことがすんなり決まる。花より団子。トロッコ駅の構内で伝えてくれていたら悩まずに済んでいたのにという"恨み言"は飲み込む。
"お笑い小劇場"
あっという間に固まった今後の方針。拍子抜けして呆けていたら、高齢の常連客らの話し声が聞こえてきた。それぞれ自分の健康について自虐的に語り合っていたのだが、その内容が実に可笑しい。堪えようとするほど可笑しくなる。レトロモダンな喫茶店が一気に"お笑い小劇場"と化した瞬間。
店を後にする時には恨み言などすっかり忘れていた。(続く)
(写真〈上から順に〉:奥さんが注文したイチジクのケーキ。フォークを2本出してくれるマスターの配慮が嬉しい=りす、純喫茶を思い浮かばせる喫茶店の店内=食べログ、京都・嵯峨野巡りの帰路に利用することにしたJR嵯峨野線=マイナビニュース)
関連リンク(前回の話):
「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:
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