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未来の本屋がもたらす価値とは-BOOK TRUCKの可能性について。アイディアのタネvol.3

今回は最近、今更静かに感動したBOOK TRUCKについての話。本の話が続いて恐縮なのですが、本以外のものはなんでそれが人気なのかをうまく捉えきれていないので、先に考えていたのに文章にまとめられてなかったことを紹介しています。

新刊本は値段が高いし、古本は敷居が高いという問題

もちろん、本当に書籍を愛するならば、最も著者に本が還元される新刊本を書店で購入するべきだと思うんですけれども。
ただ、今、書店が次々潰れる中で、未来の本屋さんのあり方とか、本屋さんがそれでも必要とされる場所ってなんだろうとか、考えてしまうんです。だってこんなに本が好きで長年本に投資し続けてきた私ですら、最近、買うのはAmazonで買う古本か電子書籍だけなんです。これってゆゆしきことだとは思いませんか?

新刊本ってやはり定価なので、高いんですよね、好きな作家さんのよほど初版で買いたいと思う本以外は、ネット上で電子書籍や古本で買った方が安いんです。

一方で古本屋さんって専門分野に応じて職人気質の店主さんが営む昔ながらの古本屋かブックオフのような大手チェーンしかないんです。
それらが悪いとは思わないんですけど、いわゆる神保町にあるような古本屋さんって書籍が美術品か何かのようで、読むことよりも所有することの魅力を売っているような気がします。それ自体が悪いことではないんですけど、本に詳しくないと敷居が高くて、本を読むことの魅力が十分に伝わっていない気がします。
見出しには含みませんでしたが、ブックオフで売っている本はびっくりするほどときめかないんです。100円本コーナーの本も普通に面白い本たくさんあるはずなのに!この味気なさはなんだろうと。これならAmazonで見た方が確実に食指動きます。

提供価値を抽象化したことによって生まれた様々な本屋の形態

最近、読んだWIRED元編集長の書籍「さよなら未来」はとても素晴らしかったのですが、その中にこんなフレーズがありました。

『WIRED』を編集するなかで、新しいテクノロジーのもたらす意義や影響といったことを考えるにつけ、それがどんなテーマであっても気づかされてしまうのは、それまでの「あたりまえ」が実は「あたりまえ」でもなんでもなく「ただその時代にあたりまえとされていただけ」のことだったということだ。「お金」「学校」「ことば」「政府」「会社」、どんなテーマでもそうだ。(略)それまで「本」といえば、製本された紙の印刷物しかなかったところに、電子書籍のようなものが出てきたことで「紙の本」は相対化され、それをそれ自体の価値として捉え直す必要が出てきてしまったわけだけれど、少なくとも、そのことによって「紙の本」の価値をもう一度真剣に考えざるを得なくしてくれたことは、デジタルテクノロジーがもたらした大きな恩恵だった。〜若竹恵『さよなら未来 エディターズ・クロニクル2010-2017』P266〜

この本は本当に素晴らしくて、付箋を本当にたくさんつけて読み終えたんですが、このパラグラフもとても印象に残った問題提起の一つでした。
「紙の本」の価値だけでなく「紙の本」を陳列する本屋の価値もこれから問い直されていくのだと思うのです。

テクノロジーの発達とあらゆるものの未来を論じてきたWIREDのコラムをまとめた単行本が今の所、紙の書籍でしか発売されてなくて、しかも著者が全国津々浦々の本屋さんを巡って講演されているというのがとても興味深いのですが、それはまた別の話です。

その1 本屋の価値=コミュニティ

本屋にはその街に住む人、本が好きな人が集います。そのコミュニティ形成のための場としての本のある空間に着目したアプローチはすでにいくつもあります。

その代表的なものがB&Bです。本屋を一つのライブハウスのようにとらえ、毎週数多くのイベントをし続けていて、下北沢のカルチャースポットになっているのですが、集客力も高く、本屋の一つの可能性を示していると思いました。

その2 本屋の価値=インテリアとしての本のある空間

本のある風景。たとえそこにある本を読まなかったとしても、紙の本が陳列される空間は一つの癒しです。そういう側面に着目した様々な本屋さんもあります。

ちょっと古いですが泊まれる本屋さん。満喫的な要素もありますが、本のある空間で眠る、という憧れが詰まっています!

あと人気の本のある空間としては、ブルックリンパーラーですよね。趣向を凝らした様々は本棚は眺めているだけで幸せ。ただ、人気すぎてなかなか落ち着いて本を読む空間にはなっていないのと、ここで本を買おうってなかなかならないんですよね。だからやっぱりここもインテリアとしての本屋さんなのかなと思っています。

本屋さんの価値=本のキュレーション

色々、考えた結果、本屋さんの存在価値って本のキュレーションなのではないかと最近は思うようになりました。

そこで最近感動したBOOK TRUCKの話です。

そんなにたくさん本を読んでいるわけじゃないですが、面白かった本は?とよく聞かれます。膨大にある本の中で今、自分が読むべき本をどう見つけたら良いのか悩んでいる人は意外といると思います。

漫画だとレーベルが比較的わかりやすくターゲティングしてくれるし、ジャンルもそれほど幅広くないと思うんですが、本ってただ文字が羅列してあるものを束ねたもので、なんていうか、「インターネット」っていうのと同じくらい一つの媒体でしかないんですよね。

それをコンテンツとして提供する場に合わせてキュレーションして販売するこのBOOK TRUCKは画期的だと思いました。というか最初はただ、本屋が移動して出店してるだけでしょうって思ってたんですけど、実際に書店に足を運んでみると、あら不思議、購買意欲が止まらない。かなり我慢して2冊だけの購入に留めました。

あぁこの棚の本の並び最高!とため息がもれるような、各イベントに合わせた構成になっていて、しかも古本がけっこう混じっていて価格もリーズナブルなんですよ。

新しいとか古いとかじゃなくて、ターゲットに「読みたい!」と思わせられるように本を魅せていく姿勢が非常に感じられました。

こんなふうにお祭りの屋台みたいにフレンドリーな距離感で本が届けられる世界ってとてもいい!そんな未来を私は生きていきたいと思いました。

結局これが何の企画のアイディアになるのか、まだ全然わかってないんですけど、人とコンテンツの結び付け方、本屋さんの価値の持ち方は何かどこかで役に立つアイディアのタネなんじゃないかと思ったのです。

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