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時を超えて共感する、魅惑的なヨーロッパ時代物映画の世界

「時代劇」というとなんだか固いですが、「コスプレ」は身近な言葉ですよね。costume playとはもともと、英語で時代劇(衣装劇、の意でしょうか)を指す言葉です。映画の世界でも、歴史や文学の知識がなくても楽しめる、オシャレで素敵な”時代劇”たくさんあります。今回はそんな中から特にキュンとする私的おすすめを紹介したいと思います。

①『エマ』ジェーン・オースティン原作/グウィネス・パルトロウ主演(1996年イギリス映画)

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いまや大御所の貫禄すらあるグウィネス。直近ではマーベル系『アイアンマン』でのヒロイン、ペッパー役が記憶に新しいですね。『エマ』は彼女の初主演作として、その初々しい魅力が随所にれあふています。ジェーン・オースティンはイギリスの国民的作家とも言える存在で、フェミニズム観点も取り入れつつエンタテインメントとして成立する物語は国を超えて今も多くの人に愛されています。19世紀の貴族の瀟洒な暮らしを描きながら、意外にも素朴なその暮らしぶり、そして今の私たちと変わらない愛や嫉妬などの想いが、リズミカルにコミカルに語られていきます。父親や周囲に愛されて育ち、何不自由ない自分の”恵まれた環境”に多分に自覚的であり、それゆえに少しおせっかいで高飛車で突っ走ってしまうエマ。大人の女性の入り口で、そんな彼女が愛する人や親友との葛藤を通し、大きく成長していくところが必見です。眺めるだけでときめいてしまう日々の愛らしいドレスや、当時の室内インテリアなども見所たっぷり。しかしなんといっても、全ては愛らしいグウィネスの魅力につきる作品。クールビューティなイメージゆえ、お堅かったり生真面目な役柄も多くこなしてきた彼女ですが、実際はおちゃめで奔放な性格とのこと、その片鱗がこの『エマ』や『アイアンマン』でのペッパー役に表れている気がします。25年もの時を経て、同じ可愛らしさを表現できるなんて本当に凄い…!この先また、ぜひ、「時代物」に挑戦する彼女も観てみたいものです。

②『理想の結婚』オスカー・ワイルド原作/ケイト・ブランシェット主演(1999年イギリス映画)

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小粋でおしゃれな英国時代物といえば、こちらも外せません。今やハリウッドになくてはならない俳優のひとり、ケイト・ブランシェットの、若く瑞々しい魅力が炸裂。夢中になりました。ワイルドの同名戯曲(現代はan ideal husband・「理想の夫」)を映画化した本作は、あちこちに知的なユーモアたっぷりのセリフが散りばめられ、思わずクスリとしてしまうシーンに溢れています。ブランシェットの他、ルパート・エヴェレット、ジェレミー・ノーサム(「エマ」にも出演)と、イギリス映画に欠かせない豪華キャストでお届けする、センス溢れる名作。個人的には、ミニー・ドライヴァーのキャスティングが最高!思いました。アメリカ人俳優かと思っていたのですが、実はイギリス出身だったのですね。年上の殿方に恋をし、慣れない手管でなんとか手に入れようとする、必死に背伸びした演技がなんとも可愛らしい。先の読めないミステリ的な要素もあり(こちらを担当するのはもちろん!すでにして妖女役の貫禄たっぷりのジュリアン・ムーア)、その後に訪れる大団円。何度観ても、すばらしく爽やかな心地にさせてくれる、大好きな作品です。

③『マリー・アントワネット』/ソフィア・コッポラ監督&キルスティン・ダンスト主演(2006年アメリカ・フランス合作)

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イギリス物の、高度に洗練されつつもどこか牧歌的な時代物とは舞台も視点も全く違う流れで、やっぱり大好きです、ソフィア・コッポラ『マリー・アントワネット』。ソフィアの長編デビュー作『ヴァージン・スーサイド』で奇跡の(?)出会いを果たしたキルスティン・ダンストとの、まさに”幸福な結婚"とも言うべき、ひとつの到達点でしょう。史実における事実よりも、その存在の魅力ゆえ噂や妄想といった「物語」が先行してしまっているマリー・アントワネットですが、あくまで史実にも忠実に、そうした人々の"観たいと願っている”王妃の姿を、儚く美しいスクリーンに映し出しています。写真家でもあるソフィアの独特なカット割は彼女の映画の大きな特徴でもありますが、繊細な装丁の物語のページを開くように、そして時にはこちらの心に直接語りかけるように、直感的でクリエイティブ、そしてエモーショナルなシーンの全てが、ラストにおける悲劇に収束していく様から目が離せません。フランスの老舗『ラデュレ』が全面協力した豪華絢爛のスイーツの描写、ふんだんに色彩を取り入れたファッション、小道具のひとつひとつに至るまでその世界観に妥協をしないソフィアと製作陣の姿勢に頭が下がるばかりです。儚い砂糖菓子のような物語は彼女によって、永遠に、スクリーンの中で生き続けるのですね。



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