「家族のようなチームだからこそのフレキシブルなワークスタイル」 — by Niika <vol.14>
WORKS GOOD! MAGAZINE インタビュー第14回目に登場するのは、オーストラリアの制作会社 Niika。メルボルンを拠点としながら、会社の設立者でありマネージングディレクターを務めるMarkさんは、メルボルンから遠く離れたタイでひとり暮らしている。そんな彼に、タイで暮らしながらチームを支える理由と秘訣、そして、 Niikaの歴史から今後のことまでを詳しく聞いてみた。
– まず初めにNiikaについて教えてください。
私たち Niika は小さなクリエイティブエージェンシーで、クリエイティブディレクターのDanと、アートディレクターのPaul、そしてマネージングディレクターでありFounderの私(Mark)の3人で形成されています。8年前に Niika を設立しましたが、会社としてきちんと機能しはじめたのは3年前ぐらいからです。
主な仕事は、ウェブサイト制作やイラストレーションなどのクリエイティブワークです。中でも私たちが最もフォーカスしているのはクリエイティブディレクションとブランディング、また、普遍的でないユニークなウェブサイトを制作することです。
– DanさんとPaulさんの2人とはどのようにして出会い、一緒に働くようになったのでしょうか?
Danとは同じ大学に通っていて、そこで友達になりました。 Niika を始めてすぐに1人では仕事をこなせなくなり、当時からすでにクライアントワークをしていたDanに連絡をとって、色々助けてもらっていました。そこから一緒に働く流れになりました。
Paulと知り合ったのは、その昔私たちがオフィスの一角を貸し出していた時です。そのスペースを借りに来たのがPaulでした。当時彼はフリーランスで仕事をしていたので、最初はプロジェクト単位の契約で手伝ってもらっていましたが、彼の仕事ぶりがとてもよかったため、正式にジョインしてもらったんです。
彼は腕にタトゥーをいくつも入れているのですが、ほとんど自分で彫ったみたいなんです。彼はとてもアーティスティックですが、それと同時にクレイジーでもあってとても興味深いですよ(笑)
– そもそもなぜ会社を作られたんですか?
23歳で大学を卒業した後、特に仕事はしていませんでした。DJをやっていたので、その縁から友達のイベントのフライヤーを作ったりしていて、その時に、これを仕事として続ける生活はどうだろうと、ふと思ったんです。そして、ティモシー・フェリスの「週4時間だけ働く」という本を読んで会社を立ち上げました。
– 今後メンバーを増やす予定はありますか?
機会があればですかね。チームを成長させていきたいと考えてはいますが、私たちはまだ多くを学んでいる途中です。人を増やすよりも、今あるチームをより強固なものにすることがまず必要だと思っています。少なくとも、単に会社を大きくしたり、楽しくもない仕事でたくさんお金を生み出すような成長は望んでいません。
– どのような基準で仕事を受注しているか教えてください。
決まった基準はありませんが、3つ確認するポイントがあります。1つ目は、自分たちがワクワクできるかどうかです。これはとても重要なポイントですね。2つ目は言うまでもなく予算です。残念ながら、良いプロジェクトでも予算が少なすぎて受けることができないこともあります。そして3つ目は、クライアントと波長があうかどうかです。クライアントが私たちの仕事や、私たち自身に好意を持ってくれているとありがたいですね。
どれだけ金銭面が良いとしても、そのプロジェクトが私たちにとって楽しいものにならない、もしくは、クライアントと良好な関係を築くのが困難だと予測できる場合、そのプロジェクトを引き受けることはありません。
– それらのポイントを踏まえて、最終的な判断は3人でするのでしょうか?クリエイターにビジネス的な事情をどこまで共有するかは意見が分かれるところですが、いかがですか?
以前は、ビジネス上の意思決定はDanとPaulに頼らず行う傾向がありました。しかし今は、できる限り正直に、かつクリアでありたいと思っています。ただ、彼らは私のことを信頼してくれているので、1人で決断を下すこともあります。もし私が迷い、他の意見が必要だと思った時には、彼らの意見を聞くようにしています。少なくとも、意図的に隠したりすることはないですね。
– 以前と意識が変わったことに、何かきっかけがあったのでしょうか。
何か失敗をしたわけではなく、3人1組のチームとしてやっていきたいという想いからです。私がひとりで全て決めてしまってそれを彼らに伝えるだけだと、チーム感は失われてしまいます。彼らも、例えばデザインをクライアントに提案する前には、私にも共有してくれます。そうしなければいけない理由がなくても、です。言わば家族のような関係ですね。
– 新規プロジェクトを受注したら、どのようなワークフローで仕事を進めていますか?
プロジェクト管理にはAsanaを活用しています。あらゆるプロジェクトで使用できるテンプレートを用意してあって、クライアントともシェアします。素材や情報もすべてAsanaにアップロードするよう、クライアントに依頼しています。
また、Webflowを使って作品を見せることもあります。Webflowはインタラクティブで、デザインがどれほど効果的かを理解してもらいやすいためです。
プロジェクトが完了したら、必要な納品ファイルをクライアントに渡します。クライアントがファイルを運用するために、長期の契約を結ぶこともありますが、通常はそこまでの必要はありません。
– ずっと気になっていたんですが、なぜMarkさんだけタイ在住なんでしょうか?
バンコクを拠点とする音楽フェスに関わっているのと、メルボルンにいるとアレルギーを発症してしまうという健康上の理由です。私がメルボルンにいた方が会社はもっと成長できるというのは重々わかっていますが、正直、今の状態でも問題はありません。私の仕事はほとんどが電話応対やメールのやりとりで場所を選びませんし、メルボルンには2–3ヶ月に1回は帰っていますので、会社を走らせるにはそれでも十分なんです。
また、マネージングディレクターという役割から、あまりプロジェクトに首を突っ込みすぎたくないという気持ちもあります。もしメルボルンにいたら、打ち合わせやらなんやらで、あっという間に忙殺されてしまうと思いますが、少し離れているからこそ、どうしたら会社が成長していけるかという課題に注力することができます。タイにいた方が良いことと、その一方でメルボルンにいる方がうまくいくこともあるので、トレードオフですね。
– メルボルンとはどのようにコミュニケーションをとっていますか?
Slackを使ってこまめにメッセージはやり取りしていて、週1回の定例ミーティングもあります。それに加え、週に1度は必ずDanとPaulそれぞれと話す時間を作っています。
– オーストラリア国内と国外のクライアントの割合を教えてください。
80%が国内で、20%が国外です。
Yarra Valley Wine and Food Festival
– 今後、海外クライアントの割合を増やしていく展望はありますか?
そうですね、増やしていきたいと思っています。実は今もWebflowというアメリカの会社の仕事をしています。
もともとユニークな仕事をするのは好きなので、海外のクライアントとの仕事は楽しいことが多いです。メルボルンはとてもクリエイティブな街ですが、オーストラリアは他の国々と遠く離れた島国なので、実験的でコンセプチュアルな仕事となれば、他の国の方がオーストラリアよりも新しい思想を積極的に取り入れる傾向があると感じています。
– 海外の実験的な仕事を増やせば、プロジェクトマネージメントも大変になってくると想像できますが、現状では誰がその役割を担っているのでしょう?
3人全員で分担しています。基本的にマネージメントに関することは私の仕事ですが、プロジェクトによっては、DanとPaulが自律的に管理し、責任をもつこともあります。
– 1人が一度に抱えるプロジェクトの数はいくつぐらいですか?
プロジェクトのタイプにもよります。Danは、未だにコードを書いたりデザインを作ることもあるものの、ほとんどは他の技術者との協業ですので、5つくらいでしょうか。
Paulは、自身に高いクリエイティビティを求められたり、大きめのプロジェクトを担当することが多いため、一度に担当する数は私やDanよりは少ないかもしれません。
– よりよい働き方のために、会社として取り組んでいることを教えてください。
Niika はまだ小さい会社なので、それほどユニークな制度はありません。挙げるとすれば、PCやiPadなど、仕事に必要な全てのハードウェアやソフトウェアは会社が購入しますし、働く時間に関しては非常に柔軟な体制を整えているので、家で仕事をすることも許可しています。ただアシスタントになると話は別で、彼らは決められた時間通りにオフィスにいなければなりません。
また、これも制度というわけではないですが、私たちのオフィスはとても素敵で、他の会社ともシェアをしています。
Image of their office
– オフィスシェアをしている会社と交流はありますか?
建築会社とシェアしているのですが、仕事を一緒にすることはありません。交流できる機会も特に設けてはいませんが、同じオフィスにいる同士、自然と会話は生まれますね。彼らが私たちの仕事を見て、私たちのことを人に薦めてくれたり、友達を紹介してくれることもあります。違う業界といえど、そういう人たちが近くにいてくれることは助けになります。
– 最後に、「良い仕事」をするのに一番大切なものは、会社としてなんだと考えていますか?
情熱ですね。今やっていることは好きじゃないと出来ないし、情熱が必要です。チームの一人ひとりが情熱を持てることはもちろんですが、その情熱を共有でき、お互いに信じ合える仲間と一緒に働くことも大事です。
※この記事内容は2018年7月公開当時のものです。
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