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「社員の国籍は10カ国以上。インターナショナルなチームで追い求める最良のクリエイティブ。」 — by Jam3 <vol.7>

今年最後となる WORKS GOOD! MAGAZINE インタビュー第7弾は、2016年 MTV VMA のサイトでカンヌを受賞し、さらに最近では  Dunkirk WebVR で Awwwards、FWA、CSS DA、の「Site of the Month」を獲得したことが記憶に新しい、デジタルデザインプロダクション Jam3 。ヘッドクオーターをカナダ・トロントに構えつつ、クリエイティブ業界としては珍しく南米にも拠点を置き、10カ国以上に渡るインターナショナルなメンバーで構成されたチームは、いかにして高いクオリティのクリエイティブを生み出し続けているのか?

Question 1:
まず初めにJam3について教えてください。

Jam3 には約60名のメンバーが在籍しています。オフィスはトロントとLA、そしてウルグアイの首都、モンテビデオにあります。3つの中でもトロントオフィスが一番大きく、45名ほどのスタッフがいます。

モンテビデオにオフィスを構えた理由は、あるビジネスパートナーがウルグアイ出身で、ブラジルなど南アメリカのクライアントとも仕事をする機会があったことです。南アメリカマーケットへのアクセスが良く、国自体も汚職などが少なくとてもクリーン。そして何より、良い人材へアプローチするための起点として、とても優れています。特にモンテビデオは良い都市で、保険も大学も無料で提供されています。これは多くの人たちにとって非常に魅力的で、私達と一緒に働きませんか?とアプローチしやすい環境を作るのに適していました。

現在、仕事がそこから生まれているかというと、正直微妙です。一昨年、昨年とブラジルで開催された、オリンピックとワールドカップの需要を狙っていたということもありますが、今では人材を得ることに軸がシフトしています。

Question 2:
どのようなフローでプロジェクトは進んでいきますか?

クライアントは通常、私たちがもつ3つのサービスのうちのどれかを求めてやってきます。1つ目はストーリー性のあるUXを意識したプロダクトデザイン。2つ目は、同じくストーリー性のあるデジタルドキュメンタリー(映像表現以外のものを含む)やキャンペーン。3つ目は技術革新や実験など、クリエイティブなプロジェクトです。いかなる場合でも、ユーザーの価値観や行動を入念に調査、分析することと、与えられた要件に対して自問自答を繰り返すことから始まります。

実験的なプロジェクトでは特に、問いをできるだけ単純にすることが重要です。「より良い多機能電卓はどのようなものであるべきか」、「拡張現実を使ってロボットを制御できるか」、「それらの体験はどう変化していくか」など。シンプルかつ明確な質問には大抵複雑な答えしかありませんが、実験とはそういうものです。

プロジェクトをスタートさせるのは通常、戦略を考えるストラテジーリーダーか、クリエイティブディレクターです。細かい調査などが必要な依頼であればストラテジーリーダーが、比較的単純なプロダクション重視の依頼はクリエイティブディレクター、もしくはUXリーダーが適任です。彼らは2種類の資料を準備します。パワーポイントやキーノートで作成した、アイデアをプレゼンするためのものと、必要となる費用と時間を詳しく説明するものです。


次に、プロジェクトチームがアサインされると、チームの全員を集めて依頼の背景が説明されます。「なぜ Jam3 がこのプロジェクトを手がけるのか」、「クライアントは Jam3 に何を期待しているのか」、「どんな問題を解決しようとしているのか」、「プロジェクトが上手くいったかどうかは何で決まるのか」、「何に集中するべきなのか」などといった質問に答えていきます。皆が同じ方向を向いて仕事することはとても大切です。逆に、会社の方針に合わないプロジェクトでは、なぜ合わないのかを説明する必要があります。そのような説明のために2–3時間かけ、その後は初期計画を立てます。ここでは、ユーザーストーリーの立案などといった、より細かな作業に入ります。そこから少しずつ(ビジュアル)デザインとUXデザインを始めていきます。ちなみに、[ Jam3 ]のUXデザイナーは、(ビジュアル)デザイナーたちと同じチームで働いています。そうすることで、体験とビジュアルの両方に良い相互作用が生まれるからです。

また、全てのデザイナーは毎週「クリエイティブクリティーク」というミーティングに参加し、お互いの進歩状況をシェアしています。トップのディレクターが主催するような会議ではなく、カジュアルに意見を交換できるため、お互いを高め合えるいい機会になっています。

Question 3:
どのようなクライアントが多いのか教えてください。

今は、映画やエンターテイメント業界のクライアントが多めですが、テクノロジー関係の会社の仕事もまた、少なくありません。彼らとの仕事は、デザイン面の問題を解決したり、製品の新しい使われ方を模索したり、彼らが自社の製品をユーザーに説明するのを手伝ったりといったものが多いです。

Awwwards、FWA、CSSDAでSite of the Monthを獲得したDunkirk WebVR

Question 4:
プロジェクトの途中で、クライアントとはどのようなコミュニケーションをとっていますか?

進捗状況は多数回にわたって共有します。一方的に、2回程度のレビューを挟むだけで終わることもできますが、それはあまりにもクライアントに失礼ですからね。進行中はほぼ毎日、プロデューサーがクライアントとやりとりをしています。取引のあるほとんどのクライアントが、サンフランシスコやLA、NYにいるため、物理的に会うことはほぼなく、GoogleハングアウトやSlack、電話などで話すことがほとんどです。特にSlackは共同作業をするのに優れたツールです。クライアントにもSlackを導入してもらい、プロジェクトリーダーたちとプロジェクトについて話す部屋を設けています。

なお、1つのプロジェクトにはコアメンバーが5–6人いて、その中の3–4名はリードデザイナー、リードデヴェロッパー、プロデューサー、UXリーダーで構成されています。チームの中での役回り、また、リーダーを決めておくことによって、個人個人がどのような働きをすればよいか明確に知ることができます。

Question 5:
ピッチ(コンペ)に参加することはありますか?

今現在、15〜20件のピッチが走っています。と言っても、私たちの場合、競合がいなくても、新しいビジネスの機会のすべてをピッチと呼んでいます。そうなった理由には、クライアントに良い印象を持っていただきつつ、何を作っていくのか順を追って明確にしたいということがあります。これらを達成するためには、数週間のディスカバリーフェーズと、「こういうものを、このくらいのコストで、このくらいの時間かけて作ろう。よし!」と決めるまでの時間が必要です。

Invisible Highway

Question 6:
1人が同時に抱えるプロジェクトはいくつくらいでしょうか?

その人の役割にもよりますね。例えばディベロッパーであれば通常1つですし、それ以外の役職の人は2–3件同時進行したりします。シニアの人たちはさらに多くを抱える傾向にあります。彼らは上流工程で関わることが多いため、実作業に移ったら、プロジェクトを俯瞰する立場として、6〜7件に関わる時もあると思います。

Question 7:
会社として、社員に働きやすい環境をどのように提供しているのか教えてください。

私たちの会社には、ポルトガル、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ、中国、ロシア、ウクライナ、アメリカ、そして日本などの海外からジョインしてくれる人材がたくさんいます。そのような人たちにとって、良い研修環境を提供するのはとても重要だと考えています。また、業務上の公用語は英語ですが、全員が同じレベルではないため、Slackなどのチャットツールでやりとりすることも多いです。そのまま喋るよりも、時間を使い、考えて書いた言葉の方がコミュニケーションをとりやすい場合もありますからね。

Question 8:
残業をすることはありますか?

どんな職種であれ、クリエイティブ業界では残業は常につきまとうものだと思います。私は、この業界を動かしているのは2つのことだと思っていて、それは「曖昧さ」と「パッション」です。「曖昧さ」がない限りそれはクリエイティブな問題とは言えないし、クリエイティブな問題を解決するためには、パッションを持った人々が必要です。単純に解決することができないというのが、クリエイティブな問題が元来持っている性質だと思います。進んでは戻り、また進んでは戻りを繰り返すため、多くの時間を要しますが、その時間を予測するのは大変むずかしいことです。

家族と過ごす時間やプライベートタイムはとても大事ですので、残業をさせてしまった場合には、なるべく埋め合わせができるようにしています。もしメンバーが週末、もしくは夜遅くまで残業を繰り返すようであれば、必ずその時間を取り戻し、彼らが家族や友達と過ごす時間をもてるようにします。また、Jam3 にはEUのような代休システム(※1)があり、他社と比べると珍しいことだと思います。

※1
残業代が支払われない残業時間を代休として取得できるシステム。

Question 9:
リモートワークや副業は許可していますか?

はい、会社以外の場所で仕事をしてもらっても問題はありません。家で仕事をする方が効率的だと言う人もいますし、状況によっては家から仕事をする方が生産性が高くなるケースもあると思います。Jam3 では、今後もう少しこの制度に着目しようと思っています。

副業はどうでしょうね。今までそういったケースがないので判断しづらいですが、もし何かやるのであれば、それをやったことによるフィードバック(成長)を期待します。

Question 10:
最後に、「いい仕事」をするのに一番大切なものは、会社としてなんだと考えていますか?

絶え間なく良いものを追い求めていくという、会社の文化です。また、良い仕事とは何かを理解し、自ら築いていくこと。そのためには正しい人材を雇い、メンバーが皆同じ方向を向けるようにすることが重要です。


※この記事内容は2017年12月公開当時のものです。

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前回までの記事はこちらから!

vol.6:「私たち『らしさ』を貫く」− by ToyFight

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