幻獣戦争 2章 2-3 英雄は灰の中より立ち上がる⑧
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幻獣戦争 英雄は灰の中より立ち上がる⑧
西ノ島駐留隠岐の島攻略艦隊群旗艦伊勢。
作戦開始後、艦隊司令部と化しているCICは、攻撃準備のため敵幻獣の観測を続けていた。
「――朱雀機、敵大型幻獣を撃破」
CIC電測員の一人がそう報告をあげる。同時にCIC中央の前部モニターに映る映像が更新され歓声が上がる。
「全艦砲撃準備! 各艦に通達。目標は那久岬沿岸部! 敵指揮官タイプ幻獣の識別急げ!」
「了解」
CIC通信士官の一人が、堰口司令の命令に応じ全艦に向け連絡する。
「朱雀は成功させてくれたようですね」
「作戦の第一目標は撃破できました。ですが、ここからが本番です」
隣で小さく呟く俺に応じ堰口司令はそう答える。
「敵はすでにこちらの防御陣地に迫ろうといています。時期に砲撃支援要請が来るでしょうな」
堰口司令はそう言って中央のモニターを凝視する。確かにその通りだ。モニターに映る戦域図が如実にそれを表している。
「比良坂陸将より支援砲撃要請を受諾」
「解析はどうだ?」
CIC通信士官の報告を聞いて、艦隊司令は別の電測員に訊ねる。
「ダメです。敵の数が多すぎて判別できません!」
問われた電測員の返答に堰口司令は顔を歪ませる。不味いな。指揮官タイプを撃破できなければ、幻獣の数を一時的に減退させることは出来ても、絶対数を減らすことは不可能だ。
「司令、まず幻獣の数を減らすべきかと」
俺は堰口司令に敢えてそう提案する。手をこまねいているより支援してやらなねば比良坂達が危険だ。
「ですな――砲雷長! 全艦に通達。目標那久岬沿岸部一帯!」
堰口司令は砲雷長に目を向け命令を発する。
「了解。目標那久岬沿岸部一帯! 全艦データリンク同時斉射。サルヴォー!」
近くに控えていた砲雷長は頷き、無線機を握り声高く命令する。伊勢をはじめとした8隻の強襲揚陸艦と6隻の重巡は発砲の警報後、各艦の50センチ3連装砲が連動し斉射。轟音が唸りを上げ、続いて各艦の前甲板VLSが解放。順次トマホークが発射されていく。連装砲の轟音にトマホークの発射音が重なり響き渡る。その音は伊勢CICにも伝搬し戦闘開始を合図するかのようだった。
「西ノ島防御陣地へ連絡。そちらの砲撃は防御陣地に近づく敵幻獣を中心におこなわれたし」
「了解」
俺の指示に応じたCIC通信士官は直ちに連絡をする。
「効果観測どうか!」
堰口司令はCIC中央モニターを凝視しながら檄を飛ばす。直ぐにモニターの映像は更新される。しかし――
「敵幻獣、2割減退。隠岐の島中心部、並びに美保神社付近幻獣集団、こちらへ移動を開始した模様」
効果観測をおこなっていた電測員がそう報告する。
「やはり効果は薄いか……砲雷長、旗艦の主砲弾を精霊鋼弾頭に切り替えろ。残りの艦は通常弾のまま砲撃を続行」
「了解。砲弾の切り替え急げ!」
堰口司令の指示に砲雷長は応じ檄を飛ばす。
「他の艦の弾頭は切り替えないのですか?」
「ええ。作戦が次の段階に進んだ時に使います。現状で使い切ってしまうのは危険です」
俺が問うと瀬口司令は先を見ているかのように答える。
「主砲の弾頭切り替え完了。斉射はじめます」
「やってくれ」
砲雷長の報告を聞き堰口司令はそう応じる。
直後、旗艦伊勢の主砲から精霊鋼弾頭の砲弾が斉射。緑色の粒子をちらしながら砲撃は那久岬沿岸部へ着弾する。
ひときわ大きい爆発を見せた伊勢の砲撃は確実に幻獣を減らす事に成功する。
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次回に続く
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