幻獣戦争 2章 2-4 英雄の役割④
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幻獣戦争 英雄の役割④
隠岐の島攻略作戦開始から既に1日が経過し戦線は崩壊。戦況は膠着し主力部隊は変わらず幻獣の砲火に晒されながら撤退を続けている。
11月2日午前5時12分。俺達は決戦のために西ノ島防御陣地から出撃。
出撃してすぐ編隊を組み、旧比奈麻治比売命神社(跡地)防御陣地跡地を経由して、真っすぐ隠岐の島へ向かう。
「……見事に水浸しですね」
防御陣地上空を通過しながら無線上で朱雀が呟く。
「稀に見る大戦果だな。朱雀」
その後悔にも似た呟きに無線上で真那は冷やかすように言う。
「これ、始末書とかになりませんよね? 陸将」
「うーん。わからんなぁ。デブリーフィングで誰か突っ込めば調査の聞き取りをされるかもしれんなあ」
泣きそうな声で聞いてくる朱雀に、俺は無線越しで困っている素振りで軽く答える。心配しなくても、お前には火の粉が飛んでくることはないさ。
「はっはっは。派手にやってしまいましたって言ってやれば良いんですよ」
俺の言葉を一蹴するように一樹が無線上で告げる。朱雀の反応が楽しくて仕方ないようだ。
「ちょっと! 他人事じゃないですよ一佐!」
朱雀が無線上で抗議するが、一樹は気にせず笑い続ける。
「心配するな。お前には何も来んよ。まあ、しれっと給料が減っているかもしれんがな」
「そうですよ朱雀君! ご飯は大切に食べないとバチが当たるんです!」
軽く笑い言う俺を乗り越え、困り気味の朱雀を叱るように霞が無線上で割り込んできた。
「ごっごめんなさい!」
「霞、そろそろ真面目になってくれ。ちょっとその調子は辛くなってた」
反射的に謝罪する朱雀を無視して、真那が霞のいつも調子をたしなめるように無線越しにツッコむ。
「え~。私が真面目になったら――」
「盛り上がっているところすまんが各機装備を教えてくれ」
俺は霞の言葉を遮り無線上で各員に告げる。そろそろ気を引き締めないと不味い。
「私は陸将と同じ装備です。電磁加速砲とシールドと長刀。ただ、他の機より予備弾倉を多めに持っています」
俺の言葉に一樹が無線越しに報告する。
「えっと、僕は電磁加速砲と試作荷電粒子砲です。荷電粒子砲は2発しか撃てないみたいです」
続いて無線越しに答え、朱雀は俺に機体周りの映像を送ってきた。コックピットモニターに表示された朱雀機は、電子加速砲が背面の武装棚に装備され、両腕で荷電粒子砲らしき大型のライフルを携行していた。
「私は一佐と同じ装備だな」
朱雀の次に真那が無線越しに報告する。
「私は、電磁加速砲の代わりに試作サーマルガトリング砲を携行しています」
最後に霞が無線越しに報告すると、朱雀と同じように自機の映像をこちらに送ってきた。コックピットモニターに表示された映像を確認すると、霞機は両腕で携行化された大型サーマルガトリング砲を持ち、背面の武器棚を潰して弾倉を背負う形になっていた。朱雀機と霞機は分隊支援用にカスタマイズされているようで、俺、一樹、真那機は通常装備と言ったところだろう。
「わかった。上陸したら君達は敵の要撃を頼む。俺はそのまま黒いオーガ型幻獣に突撃する」
俺は軽く打ち合わせするように無線上で告げる。4人は『了解』と応じた。
やがて、対岸の那久岬が見えてきた。しかし、海岸には幻獣の姿がない。まさかこちらの動きを気づいていないのか? 俺は天照の観測映像をコックピットモニターに表示する。那久岬沿岸部には幻獣の姿は既になく、俺達は幻獣の砲火に晒されることなく隠岐の島に上陸。しかし、黒いオーガ型幻獣がこちらの上陸を待っていたかのように飛び上がり、こちらに向けて光線を放ってきた! いかん、対処できん!
「朱雀! 射角正面右60度射撃始め!」
突然霞が無線上で怒号を響かせる! 朱雀機は言葉通りに咄嗟に荷電粒子砲を構え放つ。
一瞬の遅れで幻獣の光線に荷電粒子砲が直撃、爆散する。至近で爆発したため俺達は凄まじい衝撃と閃光を被ることになった。
「ぐぅぅ……各機無事か?」
俺はコックピットモニターがホワイトアウトしている中、無線上で確認する。
「一樹機、無事です」
「――痛ぅ、真那機無事です」
「朱雀機、無事です。荷電粒子砲は残り1発です……眩しい」
「ほら、私が真面目になったら貴方達活躍する場なくなっちゃうでしょ。あ、霞機無事です」
各員それぞれ無線越して答え最後に霞がそう付け加える。
「よし、各機このままあの黒い幻獣に接近するぞ」
俺は無線上で命じ閃光の中隠岐の島内陸部へ突撃した。
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次回に続く
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